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帽子の端っこから聞こえるそっけない声。
とはいえ確かにここに突っ立っていても仕方がないもんな。
バスを降りるとそこは30車線ほどがあるバス乗り場で、見たことのない数の人がざわざわと僕の前を行き交っている。さすが王都。これまで僕が出会った人を全部合わせたより多いんじゃないかな。見てるだけでコケそう。
でもワールド・トラベル出版ってどこにあるんだろう。大きな建物の壁面にはたくさんの文字がゆるゆると流れていくけれども、ワールド・トラベル出版という文字は見当たらない。これだけ建物があるのだから仕方がないのかもしれない。
「あの、ワールド・トラベル出版ってどこでしょう」
「うん? わからないな、あっちに案内所があるから聞いてみたら」
これがカルチャーショックというやつか。
同じ街で知らない場所があるとなんて。でもこれだけ大きいなら仕方ないか。案内所で教えてもらって訪れたワールド・トラベル出版にまたまた驚愕。
そこはなんだかもう、龍を縦に十頭も並べたかというような巨大な建物で、透明にキラキラと光っていた。なにこれお城なの?
出入りする人間もみんなシュっと細い服を着てカツカツ歩いてて、なんか物凄い場違い感。でも入らないわけにはいかないわけで、田舎っぽい格好の僕はピカピカ光る床の上をおっかなびっくり歩いて少し怪訝な表情の受付のお姉さんの前にたどり着く。
「WT出版にようこそ。ご予約はございますか?」
「ええと、ないです」
「それでは先にアポイントメントをお取りください」
「あの、魔女様の就職の斡旋で」
事務的なスルーされそうになったけどその瞬間、お姉さんの顔がわずかに引き攣った。ほんとかよ、とザワザワめく周囲。
WT出版っていうのか。これからはそう呼ぼう。長いし。
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