1 カプト様が落ちていた。

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 魔女様はこの地域一体を統べられている。  魔女様の就職斡旋は能力や諸条件から選ばれるから当然適正はあること自体が相手方にも斡旋の存在自体から証明されるわけで断られることはまずない。けれども普通はあまりにかけ離れた生活圏や文化圏への斡旋はなされない。馴染めないから。  だから僕のいかにも田舎っぽい格好を見て不審がられるのはまぁ、仕方がないと思う。僕も自分がここで働くことは想像もつかない。技術も文化もレベルが違いすぎて何が何だかわからない。なんで壁が透明で床が光ってるの? 「ステータスカードを拝見いたします」 「あ、はい。これです」 「……あぁ、第五分室ですか。この本社屋とは別の建物にございます。少しわかりづらいので今地図をお渡しいたしますね」  周囲をキョロキョロ見ながらカードを手渡すと、お姉さんはあからさまにホッとした。ここじゃなくて僕もほっとした。  一階なのに見上げても空しか見えない高層建築は、見えない上の階が落ちてきそうで落ち着かない。外から見えた二階以上はどこにいったんだろう。 「建物を見た時はまさかと思ったが、やはりここではなかったのだな」 「僕も安心しました。食べ物と無縁そうで」 「お主の基準はやはりそれなのか」  お姉さんから地図を受け取り歩いていくと、だんだん道が細くなり、太陽が翳っていくにつれて建物の高さは低くなり、晩御飯なのかなという生活臭が漂い始めた。  だいぶん歩いてたどり着いた第五分室は古い木造二階建ての一軒家。なんだか予想と大分違うけど、ここの方が落ち着くような。インターフォンを押しても返事がなく、何度か押したら、『うるせぇ! 勝手に入れ!』という声がしたので遠慮なく。  紙で埋め尽くされたキィキィと鳴る廊下を抜けると、作業をしていた誰かが振り向いた。 「お前、誰だ」 「僕はラヴィ=フォーティスといいます。魔女様の就職斡旋で来ました」 「魔女様の斡旋だと?」 「あの、ここはワールド・トラベル出版の第五分室ですよね?」
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