1 カプト様が落ちていた。

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「最初の本社よりはお主に似合いそうな場所だったが、それにしても慌ただしいことよな」 「そうだよね。とりあえず今日はどこか宿を取って就職祝いに美味しいものを食べましょう」 「そうだな、飲食店なら流石に怪しいものは出ないだろうし」  カプト様は僕をチラチラ見る。  この王都カッツェには少し不満がある。  どの街路もきれいに舗装されていて、食べ物が生えていないのだ。さすがに国が違えば草も違うんじゃないかと思っていたんだけど。  そう思っていると荷物の中からピピリという音が鳴る。 「何だろ?」 「先ほど渡された携帯ではないか?」  ピピリピピリと続く音の出どころを探って支給された携帯を見つけてカプト様に使い方を聞きながら開くとメッセージ。うん? 『18:30カッツェ駅発ハラ・プエルト行きのバスの切符を確保した。直前キャンセルの切符で安かったから駅まで走って乗れ。このコードを示せば乗れる』  は? え?  左上に表示された時刻は18:04。  え? え? 駅?  僕が昼前に村から乗ってきたバスが到着したところだよね、え、30分位かかるよね? 「落ち着け、とりあえずマップを開け」 「ええとどこどこ」  わたわたとカプト様の指示でMAPアプリを開くと直線距離で20分、その間にも刻々と時間は過ぎていく。え、ちょ、ま。  僕はもう大慌てて路地を駆け抜け、聳え立つ高層建築に目を取られて人にぶつかりそうになって謝りながら走り抜け、ゼェハァと息を切らしてええと、18番、18番乗り場、ええと、あった。ハア、ハァ。もう、だめ。 「お客様、余裕を持ってお越しください。定刻を過ぎるとお待ちしませんからね」 「はひ。すみません」
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