1 カプト様が落ちていた。

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 なんだろう、食べ物かなと思って近づいてギョッとした。  それは何かの頭部のように見えたから。  なんで?  なんで頭が落ちてるの? 意味がわからない。頭型のキノコとか?  初めて見る草の間に横たわっているそれを、長い枝を拾って恐る恐るつんつん突いた。しばらく待った。けれども反応はない?  動かない?  ホッとする。こういう形の実なのかな、いやまさか。  そう思って近づくと、やはり人の頭より一回り大きいトカゲっぽい頭でまたまたギョッとする。なんで今日はこんなにドキドキしっぱなしなんだろ。一人旅だからかな。  でも頭、だよね?  赤い鱗で覆われ目は固く閉じていて、どう見ても死んでいる。  リザードマンの死体とかかな。大人の頭に見える。っていうか死んでるってことは何かに襲われたってこと? それならヤバイかも。襲われた何かが周りにいるかもしれない。  そう思ってキョロキョロと見渡してみたけれど、そんな様子はなくてホッとする。そうするとモンスターに襲われて頭だけ残ったりする……のかな。  急に薄暗くなって見上げたら、太陽が雲に隠れていた。  この領域では、『渡り鳥と不均衡』の魔女様が安全な旅が送れるよう、人を襲うような凶暴なモンスターや野獣といった類は山奥深くに行かないと出会わないよう、魔力で調整されている。こんな舗装されたバス道でモンスターに会うなんて普通は考えられない。  けれども絶対じゃなくて、僕の村にはいなかったけど、ごくたまに山道で野獣に襲われたという人の話を聞いたことがある。そうだ、やっぱり旅っていうのは危険なのかも。十分注意するよう出かける前に言ってた母さんの顔が思い浮かんでサァと血の気が引いた。食べ物への期待で色々吹っ飛んでいた。  急に怖くなってもう一度周囲を眺め渡してみたけれど、動くものも見当たらなかった。大丈夫……なのかな。早く道に戻ろう。流石に道まで戻れば人も通ってるだろうしモンスターは出てこないだろう。  よし、と思って歩こうとした瞬間、ぐぅ、と腹がなった。  ……お肉?  あらためてトカゲの頭を見る。  お肉。腐ってなさそうなお肉。  そっとさわってみる。冷たい。死んでるよね? 頭だけだもんね。  よく見るとその頭はリザードマンのつるりとした頭部フォルムと違って角とか髭とかエラとかがゴテゴテついていた。見たことがない種族、あるいはモンスター?  なんとなく伝説の生き物ドラゴンを人サイズにしたような頭部?  顔だけ見てもなんだかとても強そう。  でも、お肉。
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