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「あの、僕はラヴィ=フォーティスと言います」
「……わしはカプト・ラセルテという。ところでここは……どこだ」
頭、カプトは改めてキョロキョロと周りを見渡して困惑した声で告げた。
そういえば何でここにいたんだろう。普通通るなら道だよね。首が道を通る? うん? どうやって。
「ここはラテラテの町の近くです」
「ラテラテ? 聞いたことないな。ふむ。ここはどの魔女様の領域だ?」
「『渡り鳥と不均衡』の魔女様です」
「む……思ったより飛んだな」
飛んだ?
カプトはなんだか考え込んでいる。遠くから来たのかな。そう思っているとざわざわと風が吹いて木立が揺れた。
改めて見ると本当に地面に埋まっているだけにみえる。なんとなく地面に埋まって頭だけ出してるトカゲ人を想像すると面白くなってきた。どこかシュールだ。
でもやっぱり道を逸れると危ないかもだし、そろそろ行かないと。
「あの、じゃあ僕はこの辺で……」
「待て待て‼ わしを連れて行け‼」
「えぇ? 無理無理。結構重いし」
「わしを齧っておいて何を言う⁉」
「う、そう言われると少し心苦しいです……」
「それにわしは小さくなれるから問題はない」
小さく?
カプトが何かを呟くと、見る間に縮んで手のひらに収まるサイズになった。
トカゲ人って小さくなれるものなのかな?
「ひょっとして魔法ですか?」
「そんなようなものだ」
「魔法って始めてみました」
この大きさだと食べられるかな。でもわざわざ小さくして食べるのはもったいない気がする。
ちょっと真面目に考えよう。
やっぱり焼いたら固くなるのかな。お肉だもんね。でもちょっと齧った感じでは結構柔らかかったような気がする。ため息をつかれたような気もする。
「お主、今不埒なことを考えてるだろ」
「いえ、そんなことは」
「はぁ。わしは『大きな辻と狂乱』の魔女様の領域から来た。そこに連れて行ってもらえぬか。この大きさであればその鞄の脇とか帽子のヘリにでもくっ付けておいて貰えればよい」
「えええ無理です。僕はこれから就職」
「お主は頭は弱そうだが悪いやつではなさそうだ」
「はい?」
「礼はする」
返事をする前にカプトの首は飛び上がり、帽子の隙間に収まった。どうやって飛んだんだろう。飛びきのこの仲間なのかな。
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