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「ビル、出るんだ。お迎えの時がきたぞ」看守は独房の鍵を開けた。
そうだ。いよいよ死刑執行の日、『お迎えの日』が来た。
(えーとっ、知ってるぜ。マリア像の前で祈りを捧げて、なにか甘いものを口にして、13段の階段を上がって、ロープに首を掛けるっと。そしてたしか4人だったかな、一斉に床が開くボタンを押すんだったな。執行係の心の罪をなくすためだっけ。でも俺は死なねーよっ! うっひっひー)ビルはほくそ笑んだ。
案の定、執行室には牧師が待っていた。赤い絨毯の上をビルは進んでいく。
「悔改めよ」牧師はなんだかそんな事を言っていた。
口にできるものは3つの中から選べた。
キャンディー
タバコ
クッキー(英語では『クキ』と発音するんだぜ)
ビルはタバコを選んだ。もはや勝利の紫煙が脳をクラクラさせた。
そうしてビルは意気揚々と13段の階段を登った。
執行室の扉は閉まっている。
「ビル・テイラー、最後に言いたいことは」執行官の声。
「俺は死なない!」ビルは叫んだ。
金に縁取られた赤い扉が2人の職員によって開かれた。
ビルが執行室の中に見たものは想像を絶するものだった。
それはそれは立派な『電気椅子』だった。
おしまい
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