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最初のうちは何やかんやと用があって病院通いも頻繁やったけど、初期段階が落ち着くと外出が一気に減った。勿論用事が無いからっていうんもあるけど、検診によって女体化の進行を突き付けられたり、見た目でも筋肉が落ちたりおっぱいが更に育ったりと如実に変化していく自分の身体が怖くて外へ出るんが億劫になっていく。
「みな、気晴らしに外出るか?」
そんな俺におかんがそう言うてきた。
「えっ……?」
正直に言うとその誘い、あんまり気が乗らん。
「あんたが家でじっとしとくん、これまであんまり無かったことやから」
子供の頃から日が暮れるまで外で遊んどったし、大人になっても休みの度に出掛けるタイプやったからな。それが急に大人しなったらおかんとしては心配なんかも知れん。けど仕事もせんと家でこもってる今の俺って、近所の人からしたらどう見えてるのか? そのせいで両親が要らん陰口叩かれたりしたらって考えると、気にせんでえぇ体裁というか引け目ってのに怯えてるのが現状や。
「みな」
「ん?」
「今のあんたは止まってる風に見えてるかも知れんけど、必要やからそうしてるんであって、そのタイミングは人それぞれやねんで。みんな一緒やったら逆に気持ち悪いやんか」
確かにせやけど、やっぱり【性転換症候群】ってまだまだ物珍しい病気やから、面白可笑しく噂話にされるのもちょっとなぁ。
「世間の視線なんか気にせんでえぇし、息子から娘に変わろうがみなはみなや。引け目なんぞ感じんでえぇ」
「うん」
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