14人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉に甘えた俺は、おかんが来るのを待ちながら目を閉じた。それから大体一時間後くらいに起こされて目を覚ますと、普段よりもちょっとだけきれいにしてきたおかんが病室に入っとった。
「どない? 気分は」
そう尋ねられて体調に意識を向ける。
「ん、今はどうもない」
「そうか。何があったんや?」
「うん……」
俺はこっちに顔を向けてるおかんと視線を合わせ、ちょっとシワのある手を握って胸元に押し当てた。おかんの表情は固まり、脇におるたくは何が起こったんかよう分からんいう顔をしとった。先に口で説明するべきやったと思うけど、ぼんやりとした思考の中ではどう言うてええんか考えをまとめられんかった。
「そうか……」
おかんは空いてる方の手で俺の頭を撫でてくれた。その温もりに安心した俺の涙腺は決壊した。
その後緊急搬送で治療に当たってくれたお医者さんが、二〜三人の似たような格好の……この人らもお医者さんかな? が病室を訪ねに来られた。そんな仰山のお医者さんが俺に何の用事があるの?
「小柳さん、お加減が如何ですか?」
「大丈夫です。すみません、お手間お掛けしました」
お医者さん方は良かったですと言いながらも表情が固い。
「ご家族様でしょうか? 早速なのですが、小柳さんのお体のことでお話かあるんです」
彼らはそう前置きしてからちょっと耳を疑う話を始めた。
「小柳湊さん、あなたの病名は【性転換症候群】です」
最初のコメントを投稿しよう!