えっ? 何で俺が?

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 放心状態の俺は先生の話を聞かずおかんの顔を見る。先生は話を止めて俺らの様子をじっと見てはった……ような視線を感じた。 「みな、親としてひと言ええか? 私ら家族はできる限りのことをする。あんたに不自由な思いはさせへんから、死ぬ選択だけはせんとって」  俺の手を握る母の言葉の力が、支えにもなり重荷にもなった。  病気になってしまった俺は検査入院を余儀なくされ、精神科の先生が毎日のように病室を訪ねに来られた。基本的には今の気分はどうか? だの何か変わったことはないか? だのといった雑談の延長みたいなもんやったけど、改めて尋ねられると案外変化していることに驚いた。  食べ物の好みもそうなんやけど、最近仕事で『女っぽくなった?』って聞かれることが増えてきてる。先日の仕事は婦人雑貨メーカーの広告デザインだったから当然やろくらいにしか思ってなかってんけど……昨日検査の中に身体測定があって体重が八キロも減ってたから、ひょっとしたら見た目のことやったんやろか? 「体重の減少も病の進行と言えると思います、女性は男性よりも筋肉が少ないですから。通常の病と違って健康上の異常はありませんよ」  それやったらよかったんかな? って思わなくもないけど、もう既に子宮が体の中で作られてるって知った時は衝撃やった。体を輪切りにして内臓の写真を取るやつ……名前よう知らんけど、あれ見せてもらいながら、腹痛の原因は消化器系ではなくコイツやって説明された。んで次に同じような痛みが出たら生理が始まるやろからって、生理用ナプキンの使い方を教えてもらってんけど正直全く実感が沸かん。
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