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それでか……香辛料のちょっとした刺激が死にかけてた五感を呼び覚まし、飲み進めていくうちに体内の熱を取り戻していくのを感じていた。何だかんだで本能は生きたがってるんやな……温もりを欲していた俺はホットミルクをあっさりと飲み干した。
「ごちそうさまでした」
空にしたマグカップを先生に返すと、お粗末様でしたと笑顔で受け取られた。
「一昨日くらいからお食事残してはるって聞いたから」
あぁ……何か色々と激変してる現状を考えてたら胸がいっぱいいっぱいになって、食事が全然喉を通らん。最初の頃はまだ空腹を感じれてたから多少無理して食べ切ってたけど、さっきの朝食は食欲そのものが沸かんかって手も付けられんかった。
「すみません、お腹が空かなかったんで」
「そっかぁ。一気に状況が変わって考えることが増えたんやね、それやったらこれ食べる?」
先生は小さい袋に入っとった菓子パンを取り出して笑いかけてきた。
「えっとぉ、食事制限とかって……」
男のままの食事量を続けてたら肥満になるって内科の先生に言われてるけど、大丈夫なんかなぁ?
「この病気は基本アルコール以外の食事制限って無いのよ。こういったちょっとしたおやつくらいなら大丈夫って、内科の先生には許可してもらってるの」
「そう、なんですか?」
【性転換症候群】に罹るとアルコールアレルギーを併発させることが多いそうだ。俺はチェックに引っかからんかったけど、後からアレルギー反応が出る人もおるから飲酒はやめといた方がいいって注意は受けてる。
「でも先生の分は?」
「うん、何個か買ってるから大丈夫よ。お腹空いたら食べて」
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