『俺』が『私』に変わるとき

えっ？ 何で俺が？

　何か最近、身体がだるい……。

　生活スタイルがもの凄く変わった訳ではない、一応転勤族ってやつなんで一人暮らしではあるけども。食事はほぼ外食やいうてもなるべく野菜を摂るようにしてるし、こないだ受けた健康診断でも何の異常も見つかってない。
　今日は大事な商談があるから仕事休まれへんなぁ……俺小柳湊(こやなぎみなと)は重い体を無理矢理起こし、これまでラクラクやった身支度にひと苦労しながらもどうにか一日を乗り切った。
　不調を感じてしまったせいか、それ以来気分も優れんくて、しょうもないことにもイライラするようになってきた。更に体の表面……特に胸元あたりに痛みが走って更に気が障る。
「やっぱりどっか悪いんかなぁ？」
　こういう時は考えてもしゃあない、風呂入ってさっさと寝ようと服を脱いだら胸元に違和感を覚えた。あれ？　そう思って何気に触ってみると、不自然な膨らみを手指が感知する。
「は？」
　俺は洗面台の鏡に映った姿に思考が停止した。

　これどないしたらええんや？　昨夜のショックを引きずったまま朝を迎え、体も心も優れぬまま会社に向かう。大きなミスこそせんかったけど普段以上に業務に気を配り、いつも以上に神経をすり減らしてすっかりくたびれた。晩飯を食う元気も風呂に入る元気も残ってなくて、俺はそのままベッドの上で眠りこけてしまった。