星を迎えに

2/5
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
でも〈彼女〉の気分の悪さが ずっと続いて お腹の中でちっとも育って いないと言われた。 星がもう還りかけてる? ──仕事先で出血しちゃった。 連絡を受けて 〈彼〉が車で駆けつけた。 〈彼女〉は一晩限りの入院をし、 翌日には星を見送った。 せ せつなく っ つらい か かいなき く くるしみ やっと迎えたのに… 寒くて、暗い夜だった。 〈彼女〉を 〈彼女〉の家に送ろうと 〈彼〉は車を走らせた。 知らない道だ。 迷ったか? ヘッドライトの 明かりを受けて、 星くずのような粉雪が、 ひらら と眩(ま)って、 きらら と散り飛ぶ。 淋しさが凍えて 走る車の助手席で 〈彼女〉が咽(むせ)ぶと 〈彼〉が言った。 ──ほんと言うと…俺、 子供って嫌いなんだ… 手間がかかるし…うるさいし… 厄介… だけど、彼の目に小さな星が キラと光って流れて落ちた。 ──短い夢の中で 一緒に 天上近くまで逝ったけど、 足の速い子だった。 あっという間に見えなくなって 私は腕と脚を縛られてたから 後を追えなかった… ( 全身麻酔で、意識がないにもか かわらず、被施術者は暴れたり、 施術者に暴言を吐いたりすると いうので、施術前に緊縛される ) ふたりは真夜中近くに 見知らぬ街のラブホに泊まった。 ──日づけが変わった… ──バレンタインデーね… ここしばらくの〈それ〉は味気 なかったな。 なんだか、ブリーダー ( 家畜や植 物などの交配、育種、生産などを 行う人。遊び道具屋 ) に強制され て…無理矢理あなたとさせられて でもいるかのようだった。 ひどく疲れた。 もう俺は、味気のない 〈それ〉は、やりたくないな。 それでも 初めてふたりで踊り明かした あの頃の味を… あ 愛撫や じ 慈愛を ふたりで迎えに行けるなら あなたとの〈それ〉は… セ せつなく ッ つらい ク くるしみ …を ス ス キップ…させる きっと… 俺はあなたと出逢うために 生まれて来たような気がするから あなたが近くに居てくれれば それでいい。 ありがとう。 それでは… さようなら。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!