2. 肉食か草食か

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 子供の頃、誰しもが経験したことがあるだろう迷子。雪哉もある。けど、誰も助けには来なかった。ただひたすら歩いて、見たことのある場所についた。きっと大した時間は経っていなかっただろうけど、あの時はえらく長く感じた。  なんだっけ、たしか、あのときは母親の仕事場に向かおうとして……。  まあ、でも今はもう大人だし、途中で公衆電話もあったが、迷子だから助けてなんて言うわけがない。あのときのように、ただひたすら歩いて見つけるしかないのだ。  ……ああ、そういえば俺は元々身一つで転々としているような人間だし、ここらで別の飼い主を探すというのはどうだろうか。  ちょうど、なんで奏斗が世話しつづけてくれるのかわからなくなったし、こんなに興味持ってもらえないなら、いつか捨てられるだろう。  そうだよ、捨てられる前にこっちが捨てた方がいいに決まっている。  こんな面倒臭い思いをしたまま過ごすなんて、全然快適じゃない。自由じゃない。  ……そうに、決まってる。  本当にそう考えが傾きかけたとき、唐突として後ろからぱっと何かに照らされた。  うわ、ここ車通るのかよ。そう思って道の端によけると、自分を追い抜いていくかと思われたその車が雪哉の横で止まった。  え? と思ってみると、窓が開いた。 「雪哉! あーもう、なんでこんなところにいるんだよ」 「え、奏斗?」  その車に乗っていたのは奏斗だった。 「いいから、とりあえず乗れ」 「え、あ……」  促されるままに、助手席に乗り込む。  運転席に座る奏斗の顔を見ると、悔しいけどほっとした。 「まさか迷子になるとは思わなかったんだけど」 「……うるせ、迷子じゃねーし」  暖房がついていて、自分の体が思いのほか冷えていたことに気づく。  ……ハッ、まるでヒーローみたいだな。  でも奏斗が来なかったらと思うと……自分は、本当に他の飼い主を探しに彷徨っていたのだろうか。 「でも悪い。もうちょっとわかりやすいところにすべきだったな」 「だから、別に俺は……」  ぎゅっと和菓子屋の紙袋を抱える。 「……こわかった?」 「は?」  ぽかんとして顔を上げる。  すると、席を超えて、頭ごと抱きしめられた。
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