297人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
奏斗が腰を上げキッチンの方に向かっていく。
「今からご飯?」
「いや、さっき食べてきた。水飲むけどいるか?」
冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出すと、振り向いて聞いてくる。
……そういえば、喉乾いたかも。
「もらう」
「取りに来い」
優しいのかそうじゃないのかわからない。
コップを手渡されると、そこで初めて明るいところで目が合う。こう見ると本当に顔が整っている。さぞかしモテることだろう。
奏斗はコップの水を飲み干すと、じっと雪哉を見てきた。
「ん? なんだよ」
「頬腫れてんな」
「……あ」
公園で話しかけられてから忘れていた。
「えっと、これは……」
さすがに話すのは憚られる。言い淀んでいると、会話の途中なのに奏斗がリビングの棚まで行ってなにかゴソゴソし始めた。
「なにしてんだよ?」
「いいから、そこ座ってろ」
こちらも見ずに言われる。
なぜか素直にソファに座って待つ雪哉。奏斗はしばらくしてこちらに向かってきた。
それから、奏斗がどうしたか?
「終わり」
何も聞かれず、しっかり腫れた頬の手当をされてしまったのだ。なんだそれ、こういうことするやつなのか。
……てっきりスルーされるのかと思ったのに。
知らないやつを入れた上に手当もするなんてこいつも不用心だな。しかし、初対面でこんな感じということは、意外と順応性が高いのかもしれない。
奏斗は手当の用品をしまうと、「俺もう風呂入って寝るから、あとは好きにして」と言った。
「え」
寝るのかよ。
さすがに気付いていたけど、本当にただ泊めるだけのつもりのようだ。セックスは嫌いじゃないからしてもよかったのに。
もしかして予想が外れて、本当にノンケなのか? こいつは判断しにくい。
でもまあ、今までノンケだとか言っていた男も、結局は雪哉をどうこうしたくなるパターンが多い。
最初のコメントを投稿しよう!