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それに、セックスなしでも置いてくれるなら全然いいんだけど。
雪哉は恋愛をしたいわけじゃない。そりゃどうせセックスするなら見た目がいい方がいいに決まっているが、したいときは外でそういう相手を見つければいい。自由度は高ければ高い方がいいだろう。
とはいえ、雪哉を飼いたがる人間でそんなタイプはなかなかいなかったのだが。
……まあ、なんにしろ、まだここに置いてもらうことを交渉していない。とりあえずは今日だけという約束だ。
宣言通り、奏斗は風呂場へ消えていった。雪哉は一度コップをシンクに置くと、再びソファに座りこむ。
……これは、少し工夫が必要かもな。
────なんて思っていたのに、そのまま朝になってしまった。
ずっと外にいることがあまりないせいか、昨日思ったより体力を消費していたらしい。気付いたらソファで寝ていた。
夜のうちに何か仕掛けないと、と思っていたのに俺のバカ! これで良物件チャンスが失われたらどうする。
それに、ふかふかあったかいベッドじゃなくてソファで寝てしまったとは。気付いたならベッドに連れてけよといつもの感じで思ったけど、まだ飼い主じゃなかったし、かかっていた布団のおかげで寒くなかったのも確かだ。
奏斗は仕事に行ってしまったようだった。帰ってきて「まだいたのか」とか思われそうだけど、もはや手段はそれしか残されてない。普通にド直球で言う。
とりあえず風呂に入ろう。それから腹も減った。
脱衣所に行き、ふと鏡を見てみると、
「あ、引いてる……」
まだ完全には治っていないが、確実に頬の腫れが引いていた。
これなら、風呂でも染みずに済みそうだった。
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