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──お前、本当に何もしないな
──なに、悪い?
──まあ、知らねえけど
──……あ、そういえば、昼飯置いてよ。昨日腹減りすぎて死ぬかと思っただろ
──つくれよ自分で
──いやだ
即答すると、奏斗はため息をついた。
──……仕方ねーな
という会話が奏斗の家のヒモになってすぐの頃。
住み着いてしばらく経ったが、奏斗についていくつかのことがわかった。
奏斗は営業職で、毎日朝早く家を出ては遅めに帰ってきて、夜ご飯を食べるときは食べ、食べないときは食べない。そして、風呂に入って寝る。ただそれだけを繰り返している。
大抵の人間はそうかもしれないが、あまりにもそれだけ感がすごかったので、こいつ人生楽しいのか? と思ってしまうほどだった。
全く笑わないし、たまに思い詰めた顔をしているときもある。イケメンな上に若くして稼いでいる勝ち組なのだから、もうちょっとはしゃいでもいいと思うのだが。まあ、ヒモにはわからない苦労があるのだろう。
それから、あいつはしばらくしても、雪哉に何があって家がないのかということを一切聞かないし、なんなら基本的な情報すら聞かない。でも、それがなんだか助かる気もしていた。
さらには、あいつは雪哉に何もしない。性的な意味で、本当に、なにも。まだ決定打には欠けているが、絶対男もいけるタイプだと思うのに、雪哉が目の前にいるにも関わらず何もしない。雪哉に反応しないなら、お前それはもう不能だぞと言いたくなった。
ソファから腰を上げると、冷蔵庫を漁って今日の昼飯を取り出す。
なんと、あいつ料理ができるのだ。昼食を用意しろとは言ったが、まさか手料理とは思わなかった。意外と優しいし寛容だ。
さすがに夜帰ってくるのが遅いときはデリバリーをするのだが。好きなのを買うし、払うのはあいつなので不満はない。
レンジでチンなんていやだと最初はごねたが、一回口にしてみると、悔しいが美味しくて今では黙って食べている。
とにかく、雪哉はそれなりに心地よいまま日々を過ごしていた。
会話こそあまりないが、部屋ももらったし、ベッドも頼んだら買ってくれた。お金も必要な分だけくれるし、あとやっぱり結構優しい。というか、甘い。めんどうくさそうだったり、いやそうだったりしても、結局やってくれる。
ただ、雪哉は些か気になっていることがあった。セックスなしで置いてもらえるならそれがいい、なんて思っていたが少し違うようなのだ。
あいつは、暇だから雪哉をおいているだけだ。なら、見返りもなくただ雪哉の世話をするのが本気で面倒になったら? 今のこの状態ではすぐに捨てることができてしまう。
そんな中、優雅に生活なんてできるわけがない。
……となれば、やはり飼い主に手放せないと思わせるには、身体を使うのが一番効果的だと思うのだ。
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