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慣れた動作で舐め始めることしばらく、なんだか自分まで興奮してきた。最近こいつを観察したり、思いのほか家が楽で外に出ておらず溜まっているせいだ。
元々そのつもりだったとはいえ、ただセックスしたいという衝動がやってくる。
「ん……」
思わず声が漏れた。
さっきから好き勝手にやっていたが、あ、今のはまずい、と直感した時には遅く、ばさあっと勢いよく布団が宙を舞った。
「……お前、何してんの」
いつの間にか目が慣れていたらしく、体を起こした奏斗とはっきり目が合う。
……チッ、もう少しだったのに。
この惨状に理解が追いついた後、奏斗は冷静だった。さっと下着とズボンを上げ、リモコンで電気をつける。
「で、どういうこと?」
「……起きるの早すぎだろ」
答えもせず、雪哉は拗ねるようにつぶやいた。
挿入までしたあと、さすがに起きた奏斗に気持ちいいと思わせるのが目的だったのに。既成事実ってやつ? ちょっと違うか。
「おい、ちゃんと答えろ」
「いやだ」
「雪哉」
叱るように言う奏斗。
……あれ、今初めて名前呼ばれたかも。
「だってお前、俺のこと全然触ってこないだろ」
「なんで触るんだよ」
「いや、それはそうだろ。俺は飼われてんだぞ。体が商売道具だ」
「商売道具って……じゃあその体力、家事とかに回せよ」
「家事は俺じゃなくてもできる、そもそもやりたくない」
「わがままだな……」
「……ふん」
わがままで結構。
作戦がうまく行かなかった上に、そもそもこいつには雪哉をどうこうする考えがなかったらしい、腹が立つ。なんで俺がこんな思いをしなくちゃいけないんだ。
「とにかく、お前が今までそうしてきたのはわかったけど、俺にはしなくていいから。怒ってもないから、早く寝ろよ」
そういうと、また電気を消して寝る体勢に戻ってしまった。
怒ったかなんて気にしてねーし、しなくていいなんて聞いてねーし、と言いたいことがたくさん出でくる。でも完全に布団をかぶってシャットアウトされては、それも言えなかった。
本当に興味ないんだな。
いらないならいらないでいいのかもしれない。でも、その代わりすぐ捨てたりしないって約束しろよ。……できないんだろ。
……とりあえず、すっかりその気になった俺のこと、なんとかしろよ。
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