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「は、なにして……!」
「いや、かわいそうだなって思って」
初めて奏斗がこういう風に自分に触れたことに驚く。雪哉はハテナを浮かべながら、奏斗のこの行動の意味を早急に探った。
でも、あったかくて、少なからずあった迷子からの不安がじわじわ解けていくような気がして、とりあえずそこに収まってしまう。
「……元といえば、お前のせいなんだからな」
「はいはい」
「お前が俺をこんなところに……」
「ああ、ごめんな」
頭を撫でられて、思わず黙ってしまう。くそ、いつもはこんなことしないくせに。
「……もう離せよ」
「じゃあ、もう家帰るけど大丈夫だな?」
「もうも何も、最初から大丈夫だわ」
奏斗は体を伸ばして雪哉にシートベルトをつけさせると、後部座席に置いてあった毛布をぱさりと渡してきた。チッ、甲斐甲斐しいこった。
運転する奏斗の横顔をチラッと見る。こいつそういや、車通勤って言ってたな。全然見る機会がなかったから、こいつの車だって気づかなかった。
「つーか、なんでここがわかった」
「たぶんお前、あの店の周りぐるぐるしてたんだよ。ちょっと探したらすぐ見つけたわ」
ぐるぐる? そんなはずはない。雪哉はまっすぐ道を歩いていた。
しかし、車で進めばすぐに雪哉が頼まれて行った和菓子屋辺りに出た。
「方向音痴はこれから道わからなくなりそうだったらすぐ連絡しろ」
方向音痴じゃねえと言いたかったが、全く説得力がなかったので睨むだけにした。
しかもおいおい、これからって、また行かせる気か? もう一生行かねえぞ。鬼か。
外に出したいなら、お前が車で連れて行けばいいだろ。
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