2. 肉食か草食か

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 買い物から帰ってきた後、やっぱり奏斗は雪哉のリクエストどおりにご飯を作った。  この自分好みの料理を食べるたびに、もう他のことなんてどうでもいいか……と思ってきてしまうので、こいつの料理は危険だ。危険だけど求めてしまう。毎回このサイクルだ。 「お前、自分が食べたいものとかないわけ?」  夜ご飯を食べ終え、早めに風呂にも入ってしまうと、ちょうど一緒にソファに腰掛けながら過ごす時間があった。  テレビのあるのはリビングだけだから仕方ない。奏斗はまた書類の確認とやらをしていた。 「え? ないな。だからいつもお前に聞いてんの」  今まで適当に食べてたし、と続ける。 「ないってことはないだろ」  はあ? という顔で雪哉がずいと近寄る。ヒモの立場から言わせてもらうと、人間、飯さえ食えれば生きていけるんだぞ。というかお前は飯を食うために仕事をしてるんじゃないのか? 生きがいだと思ってやっているようには思えないし。  母もそうだった。ただ生きるため、ヒモ男を生かすためだけに働いていた。あとついでに雪哉のことも。 「本当にない。今まで一度もない」 「ええ……」  今まで一度も、でちょっと引いた。それとも贅沢しすぎたせいで食べたいものを全て制覇したとか? それでもまた食べたいものが出てくるのが普通だろう。  そこまで食に関心がなかったとは。料理できるのに。 「でもあの和菓子は好きなんだろ」 「まあな」  それだけ言うと、また書類確認に集中し始めてしまった。もとより、こちらをチラッとも見なかったが。
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