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えっ────
顔、もとい全体を目に収めた瞬間、驚くと同時に喜びが湧いてきた。
期待が当たった。その男は大変イケメンだったのだ。
「何かあったんですか」
そのイケメンが、掴まれた雪哉の手首を見て静かに言った。
「あ、いいや、そんなことはない。な、君?」
きもおじがうろたえながら言って、雪哉が肯定するのを待つ。
でも、そんなことはどうでもよかった。
すらりと高い背に、痛みのない黒髪、形のいい唇。少しばかり吊り上がった目が男の色っぽい印象を与えるが、いやらしさは全くなく自然で、それがとても良く見えた。
そして、身なりがいい、雪哉は直感で金の匂いを感じ取った。自分と同じくらいの年齢だろうけど、これは上々。
それに、その冷めた目の奥を見れば、本当にトラブルを心配しているわけではないのがすぐわかった。──そうか、この男も夜の相手を探しているのか。それなら都合がいい。
「俺、今日泊まるところ探してるんだけど」
目を見て告げる。
「え、ちょ、私は」
当然だが、きもおじがさらに狼狽えた。悪いな、きもおじもただ出会いを探しているだけなのに。だけど俺は俺の方が大事だから、より期待値の高い方を選ぶに決まっている。
「いいよ。こっちきて」
ほら、きた。
「ごめんおじさん、また縁があったら会おうな」
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