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何も話さないイケメンにただついていくこと数分。マンションが立ち並ぶ住宅街までやってきた。そこで、ようやくその男が立ち止まる。
「ここまできたら大丈夫だよな」
暗闇でもわかる整った顔。今日はこいつとセックスして、ゆっくり屋根の下で寝られる……
「じゃあ、気をつけて」
「は!?」
イケメンはそう言ったら、踵を返してここから去ろうとする。さっきより早足だ。
え? じゃあ気をつけて?
今の、まるで解散するときの言葉じゃなかったか?
「お、おい! どういうこと?」
あわよくば次の寄生先にしようとしていたのに。
慌てて追いつくと、男が今度は何だ? とでもいいたげな顔をした。お前が拾ったんだろ。今日俺と寝るために、あのハッテン場で。
「……無理やり連れて行かれそうになってたんじゃないの?」
訝しむように聞かれる。少しめんどくさそうだ。
「いや、無理やりっつーか………今夜の相手に誘われて俺も乗っかった? っつーか」
そこまで説明しても意味がわかってない様子に、雪哉は盛大な勘違いが生まれてることに気づく。
「あそこハッテン場なんだけど、知ってた?」
「ハッテン……ああ」
その言葉は知っているらしい、納得いったように声を落とした。でも、実際にあそこがそうだったとは知らなかったと。
じゃあ、なんで声をかけてきたんだ。家がないと誘ったつもりの俺を、ここまで連れてきたんだ。
あの目は、明らかに雪哉のことを心配して助けにきた顔ではなかった。だから、今夜の相手として、あのおじさんから奪うためかと思っていたのに。本当に、俺が困っていると思って助けただけ? 全くわからない。
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