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男は勘違いだったことに呆れるようにため息をついた。
「あー、じゃあもしかして邪魔した?」
「いや、やっぱりやめようと思ってたからいいけど」
「そう。まあ、俺も見えて仕方なくやっただけだから」
……結構ぶっちゃける。好青年ぽいのはぽいだけで、全然愛想はよくない。だけど、それなら納得だ。
捨て猫を見つけてしまって、無視することもできず拾ってしまった、というのと似たようなものか。そう変換すると結構優しいというか、面倒見がいいのではと思ってしまう。
泊まる家を探していると言った俺をここまで連れてきたのも、あそこから逃げるための口実だと思って合わせたというわけだ。
なるほどなるほど……
って、まずい、今度こそ会話が終わる。このまま別れたらこの寒い中また寝床探しだ。すぐ見つかるとしても、もう一秒も外にいたくない早くあったかいベッドで寝たい。
雪哉がよく知っている興味のなさそうな目は気に入らないが、これしきのことでこの良物件を逃してたまるか。
「あ、でも、今日泊まる場所がないのは本当で────」
「……じゃあ、うちに泊まる?」
表情も変えず、思いのほかすぐにレスポンスがくる。
お? そこまで面倒を見るのは嫌がりそうだと思ったが。いや、嫌がってはいるか。
その反応はいただけないにしても、ここはぐっと堪えるしかない。野宿だけは勘弁だ。
会ったばかりとはいえ、興味なさげなのは不満だが、ないものは持たせればいいだけ。俺はもうそれを知っているし、すべを持っている。
それに、さっきのハッテン場のことを聞いた時の反応。男同士に抵抗はないとみた。
どちらにせよ、こっちについてきたのはやはり正解だったかもしれない。
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