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奇妙な三角関係
「口では何とでも言えるわ。でもあたしは、あんたの良い子ぶった演技に騙されたりしない」
敵意むき出しなキャルトに全身から冷や汗を流すヴァン。その様子を、ベイルは人の悪い笑顔を浮かべて楽しんでいる。
(こんなのどうしろっていうんだよ)
困惑したヴァンの心の問いに答えてくれる者は、誰もいない。
遡ること、一時間前。
レンガ造りの建物が建ち並ぶ、この辺りでは最も大きな街。
沢山の店屋が軒を連ねる大通りでは、大勢の人々が行き交っている。中には立ち止まって店先の看板を読んでいたり、財布の中身を確かめている旅人風な人もいる。
一軒の飲食店から茶色い短髪の青年が出てきた。手荷物は右肩に引っ掛けているリュックサックと、細長い筒状のケース。ケースは彼の身の丈よりは短いが、それでもかなりの長さがある。
一見ここの住人のようだが、街の人間にしては荷物が多すぎ、観光客というには少なすぎる。
実際、彼はそのどちらでもない。
彼の名前はヴァンター・クリフト。ある人物の弟子として、放浪の旅をしている旅人だ。
しかしそこら辺をうろついている旅人とは、見るからに貧富の差がある。彼と師匠は相当収入のいい仕事をしているんだろう。
ヴァンは飲食店から出てすぐのところで、やる気なさそうに通りをきょろきょろと見渡した。前の通りには沢山の人が行き交っているが、肝心な師匠の姿は見当たらない。
ヴァンはあからさまに顔を顰め、とりあえず右に向かって歩き出した。
(何で僕が師匠を探さないといけないんだ)
納得のいかないヴァンの足取りは重い。
「ししょ!! っと、危ない危ない。ベイルさん、どこにいるんですか?」
無意識に師匠と呼びかけ、慌てて言い直す。幸い口煩い彼の師匠は近くにいなかったようだ。
双方共に認めた師弟関係なのだが、何故か本人は師匠と呼ばれることを嫌っていた。
「はぁ。全く、どこに行ったんだろ」
呆れたように頭を掻き、軽いため息を吐いて、ヴァンは足を止めた。
ヴァンより早く昼食を食べ終えた師匠が、腹ごなしに散歩してくると言って店を出て行ったのは、ほんの十分前。
そんなに遠くに行ってはいないはずだが、こうも人通りが多いと探すのも一苦労だ。
(やっぱり逆だったか?)
そう考えたヴァンがしぶしぶ後ろを振り返ったその時。
「お前、さっき師匠って言わなかった?」
「おわっ!! びっくりするから突然現れるのやめて下さいよ」
目の前にヴァンの師匠、ベイル・グルームが立っていた。
黒に近い灰色の髪は、肩よりも長いストレート。ヴァンと同じで荷物は少なく、背中に身の丈ほどの大剣を背負っている。
犯罪が多発する今の時代では、旅人は必ずといっていいほど護身用に武器を持っている。だから武器を持っていること自体は驚くことではない。
問題なのはその大きさ。これほど大きな剣を持っているのは、この男くらいではないだろうか。
長さも重さも通常の剣の二倍はあるそれを、ベイルは顔色一つ変えずに背負い、ヴァンと会話している。
「お前の修行が足りないから。しょうがない、今日からは実戦を三倍に増やして――」
「勘弁してください。僕、本当に死んじゃうかもしれません」
「大丈夫だ。この程度で死ぬ奴は俺の連れになんかなれねぇよ」
本気で嫌そうな顔をしているヴァンを、ベイルは不敵な笑みを浮かべて見下ろしていた。
ヴァンの経験上、こういった笑顔の後には必ず命に関わるような修行課題が用意される。それもかなり強引で無茶な手段を使うのだ。
ある時は山賊に自らけんかを売りに行き、三十人もの武器を持った人間を相手に、ヴァン一人で戦わせたりなどもした。
「お手柔らかにお願いしますよ」
「それは、その時になってみないとわかんねぇな」
過去に一度、ベイルの修行で死に掛けた時のことを思い出し、ヴァンは身震いをした。
「何だ?」
街を出てすぐの平原。
そこには、人の往来で自然に踏み固められて出来た道が、一本だけ通っている。
その道を歩いていたベイルとヴァンは、道を塞ぐように立つ少女の前で立ち止まった。
金色の肩につくくらいの髪。膝上のプリーツスカートに、可愛らしい子供向けのキャラクターが描かれたTシャツ。背格好からして、年は十歳くらいだろうか。
我関せずとそっぽを向くベイルを一瞥すると、仕様がないなとヴァンは少女に近寄り、目線を合わせるようにしゃがんだ。
「どうしたの? 君、迷子? パパとママは?」
優しく問いかけるヴァンに、少女は鋭い視線と殺気を向ける。
「!」
パァンッ
反射的にヴァンは少女の前から飛び退く。乾いた発砲音と共に放たれた銃弾は、数瞬前までヴァンがいた場所を通過した。
信じられないという顔をしたヴァンの視線の先では、幼くあどけない少女が拳銃を手に立っている。
(どうしてこんな子供が銃を……。それに、今のが狙って撃ったものだとしたら……)
「失礼ね、ヴァンター・クリフト。あたしは子供じゃない!!」
その見た目と不釣合いな、大人びた口調で話す少女。視線は鋭く、苛立った声はすぐにでも二発目を撃ちそうだ。
「どうして僕の名前を?」
「それくらい知ってるわよ。なんたって、そこにいる世界最強の剣士、ベイル・グルームの唯一の弟子なんだから」
ベイルのことまで知っている。
(この子は一体?)
自らの知識をひけらかす様に喋る少女を、ヴァンは警戒を解くことなく見つめる。
「あたしはキャルト・ベルサンテ。こう見えて年は十六よ。ヴァンター、あんたを倒して、ベイル様の隣はあたしがいただくわ!!」
「モテモテだな、ヴァン。羨ましいねぇ」
場違いに暢気な声が会話に割り込む。さっきから遠巻きに二人の様子を眺めていたベイルだ。
その言葉とは裏腹に、ベイルは嬉々とした表情を浮かべている。
キャルトと名乗る少女の口振りからすると、この後確実にヴァンと何らかの勝負をするからだろう。
「どちらかと言うと、これはあなたに向けられた好意だと思います。僕は巻き込まれた被害者ですよ」
論点の逸れるふざけた横槍を、ヴァンはため息交じりで訂正する。
もう既に、ベイルの中では話題は次のものに変わっているようだが。
「ちょっと気になるんだが、十六の女はあんな子供っぽいキャラクターもののTシャツ着ないだろ」
「それは個人のセンスに任せませんか?」
「それもそうか」
「勝負するの? しないの?」
馬鹿げた会話を繰り広げる二人に、痺れを切らしたキャルトが声を荒らげる。
心なしか、ヴァンに向けられる視線の敵意が増した気がする。
「いいじゃねぇか。相手してやれよ。あの嬢ちゃんなかなか強そうだ。さっきの弾も相手がお前じゃなかったら心臓ぶち抜いてたようだしな」
拒否を許さない絶対の力が隠された笑顔で、ベイルがヴァンの肩に腕をまわす。
「ベイルさんが乗り気じゃ、逃げられないですからね。仕方ないなぁ。とりあえず、場所を移そうか」
渋々勝負を受けたヴァンの顔には、言葉以上に仕方がないという感情が込められていた。
勝負の場所は、通行人の邪魔にならない平原の一角になった。
少し距離をとって向かい合う、ヴァンとキャルトの周りには、岩がごろごろしている。
その内の一つ、適度に二人から離れた位置にある岩にベイルは腰掛ける。
「先に一つ聞いてもいい? 何で、ベイルさんのことで僕に勝負挑んで来たの?」
ヴァンはベイルの横槍でうやむやになっていた疑問を口にした。
「とぼけたって無駄よ。あたし知ってるんだから。あんたがベイル様に、憧れ以上の気持ちを抱いてるってこと。毎日ベイル様に気に入られる為に必死になってるって」
「へ?」
「うっそぉ。ヴァンター君、そうだったのぉ? 相思相愛になりたぃ?」
最初、ヴァンは何を言われたのか理解できなかった。
けれどすぐに、ベイルの小ばかにした声で我に返り、必死で否定する。
「こんな頭のいかれた人、こっちから願い下げですよ。ベイルさんも変な喋り方で茶化さないでください」
「口では何とでも言えるわ。でもあたしは、あんたの良い子ぶった演技に騙されたりしない」
嬉しくない誤解に、冷や汗を流しながら必死で否定するヴァンの言葉は、聞き入れてもらえなかった。
その様子を、ベイルは人の悪い笑顔を浮かべて楽しんでいる。
どうやらキャルトの脳内では、ヴァンはベイルが好き。
自分もベイルが好き。
つまりヴァンと自分は、ベイルを取り合うライバルという、いわゆる三角関係の構図が出来上がっているようだ。
ところが、ヴァンがベイルを思っているなんて事実は存在しない。そんなのはどこかの誰かが流行らせた、くだらないデマなのである。
しかしキャルトは聞く耳を持たない。これでは誤解を解くことは不可能だ。
(こんなのどうしろっていうんだよ)
困惑したヴァンの心の問いに答えてくれる者は、誰もいない。
「ところで、嬢ちゃん。勝負の種目とルールは何にすんだ?」
再び二人のやり取りを傍観していたベイルは、会話が途切れたところで話を目的に向けなおす。
「勝負は当然、殺し合いよ。ルールは一対一である限り、何でもあり。どちらかが負けを認めるか、死んで戦えなくなった時点で終了。あたしが勝ったら、ヴァンターには弟子を辞めて貰うわ」
「じゃあ僕が勝ったら、僕の言っていることを信じてもらいます。あと、弟子も続けますから」
「それでいいわ。絶対に負けないもの」
自信たっぷりに勝利宣言をしたキャルトは、スカートで隠れる位置に取り付けたホルスターから、先刻ヴァンに向けて発砲した拳銃を取り出した。
ヴァンも持っていたリュックサックを置き、細長い筒状のケースから、ケースより僅かに短い槍を出して構える。
どちらの武器も、手の込んだ細かい装飾が施されている。
「僕の準備は出来たから、君の攻撃を開始の合図にしよう」
「お言葉に甘えて。行くわよ」
拳銃の発砲音を合図に、二人の勝負は始まった。
合図と同時に駆け寄ってきたキャルトが至近距離から発砲する銃弾を、ヴァンは紙一重で全て避けた。
攻撃する暇を与えないように、キャルトは次々と銃弾を発射し、それをヴァンはただただ軽やかに避け続けている。
「ヴァンの奴、あの武器は飾りだな。攻撃するつもりがまるでない」
岩の上で観戦していたベイルは、ヴァンに攻撃の意思がないことに気付き、不服そうな顔をしている。
「このままだと嬢ちゃんの弾切れで終わりそうだな」
つまらないと言外に訴えているが、それに答えてくれる者もいない。
「ちょこまかとっ」
怒りに任せて振り下ろされた拳銃をヴァンは横に跳んで避ける。
これまでキャルトが仕掛けた攻撃は全て避けられ、ヴァンは全く攻撃をしていない。
このまま本当に、ベイルの言う様に弾切れで終わってしまうのかと思われた時だった。
「あたしのとっておきを見せてあげる。泣いて謝っても知らないから」
(とっておき?)
ベイルは僅かに眉を顰める。
そんな事はお構いなしに、キャルトは無表情で拳銃を握る手に力を込めた。
拳銃に刻まれている溝に沿って赤い光が走る。
ヴァンに向けられた銃口も、仄かに赤い光を放っている。
「『我が血に呼応し目醒めろ』ファイア!!」
キャルトの掛け声で、銃口から勢いよく赤い光の塊が飛び出した。
慌てて飛び退いたヴァンの前を通り過ぎた光は上空で、鳥のように羽ばたいて再び照準をヴァンに合わせる。
急降下してきた赤い鳥を間一髪で避けたヴァンを、赤い鳥は消えることなく追い続ける。
(この不可思議な術。まさかあの拳銃は……)
鳥に背を向けて逃げていたヴァンは振り返ると、手に持っていた槍の尖端を鳥に突き刺す。
すると呆気なく赤い鳥は霧散した。
「レクジュームか。大層な物持ってんな、嬢ちゃん」
それまで傍観していたベイルが驚きの声を上げる。
ベイルに褒められたと思ったキャルトは、とても嬉しそうに笑っている。
「すっごいでしょ。あの呪われた武器とも言われるレクジュームにあたしは選ばれたのよ」
「これは、なかなか不味いな。ヴァン」
「全然そんな風に聞こえないんですけど」
あっけらかんと笑みを含んだ口調で話すベイルに、ヴァンはがっくりと肩を落とす。
レクジュームとは、別名、呪われた武器と呼ばれる出所不明の武器である。
武器によって所有者が選ばれ、認められていない者がこの武器を長い時間持っていると武器の影響か変死する。
製造者も製造方法も原理も不明だが、呪文を唱えることで不可思議な攻撃を発生させる性質を備えている。
「手加減せずに本気で行けよ」
これまで全く攻撃しようとしなかったヴァンに、ベイルは表情を引き締めて、厳しい口調で命じる。
「なっ、師匠!? いくらレクジュームを持ってるからって、相手は女の子ですよ!?」
ベイルの発言に慌てて異を唱えるヴァン。珍しく声を荒らげ、その顔には激しい狼狽が浮かんでいる。
何故ならこれまで一度もヴァンは、子供や女性に攻撃をしたことがない。戦わなくてはならなくなっても、絶対に傷付けたりはしなかったのだ。
「文句は聞かねぇ。これは命令だ、ヴァンター・クリフト。本気でその嬢ちゃんと戦え。あと、その呼び方はやめろ」
「ですがっ!!」
「俺の言うことが聞けないなら、俺達の関係もここまでだ」
猶も言い募ろうとするヴァンを、ベイルは冷たくきつく言い伏せる。
ベイルの言葉に、ヴァンは口を噤み黙り込む。この関係を解消すると言われてしまっては、ヴァンに歯向かう術はない。
「……分かりました。本気でやればいいんですね」
槍を握り締めて覚悟を固めると、ヴァンはキャルトに向き直る。
キャルトは頬を膨らませて、不機嫌そうに立っていた。
「何二人で分かり合ってんのよ!! 俺達の関係って、やっぱり噂は本当だったのね!!」
「単なる師弟関係のことだよ。ったく。話といい、見た目といい、やりにくいな」
深まる誤解にキャルトはより一層声を荒くする。
槍を構えながら、ヴァンは辛そうな表情でキャルトを見つめている。
(今ここで破門されるわけにはいかないんだ。許してくれ)
「ヴァン」
「分かってます」
ベイルの呼び掛けに、視線を向けることなく答える。
握り締めた槍に意識を集中させて、ヴァンはそれまでと違う鋭い視線をキャルトへと向けた。
その瞳には並々ならぬ決意が込められている。
「実力の差を、見せてあげるよ」
「『我が血に呼応し目醒めろ』」
槍に刻まれた装飾が青白い光を放つ。
風が渦巻き、ヴァンの元へと集まっていく。
危険を感じたキャルトが、すぐにでも逃げられるように身構える。
しかし二人の距離は三メートル以上あるのだ。
ヴァンの槍の長さは二メートルもない為、どんなに振り回したところで当たるはずがない。
もっとも、それは普通の槍だったらの話だが。
ヴァンは、ただその場所で槍をキャルト目掛けて突き出した。
すぐにキャルトは転がるように横に逃げる。
次の瞬間、キャルトが立っていた後ろにあった岩に、巨大なドリルで抉られたような窪みが出来ていた。
振り返ってそれを確認したキャルトは、驚き見開いた目でヴァンを見る。
「……何よ、今の」
「僕の槍もレクジュームなんだ。本気で行くから、頑張って逃げてね」
優しい笑顔を浮かべて駆け出したヴァンの目が、険呑に煌めいた。
決着は思いの外早くついた。
土塗れで跪いて息が荒いキャルトの側に、ヴァンは槍を手にして静かに佇んでいる。
服には大量の土がついているが、奇跡的にキャルトは無傷だった。
ヴァンが無意識の内に手加減をしてくれていたのだろう。
「そろそろ、負けを認めたらどう?」
「まだよ! あたしはまだ負けてない。あんたなんかに、負けるわけない」
口ではそう叫ぶが、体は疲弊し立ち上がることも出来そうにない。
拳銃を握っている手も、もうほとんど力が入らないのだ。
ヴァンにも、そのことは分かっているのだろう。
先程から、困ったようにキャルトを見下ろしているだけで、全く攻撃も槍を構える素振りもしていなかった。
ふと風向きが変わった。
異変に気付いたベイルが、遠くを見つめて目を細める。
吹いてきた風には微かに火薬と血の臭いが混ざっている。
不機嫌そうに舌打ちをして岩から降りると、ベイルは膠着状態の二人に声を掛けた。
「二人とも勝負は終りだ。ヴァン、行くぞ」
「ベイルさん? どうかしたんですか?」
「風が変わった。このままここにいると、見なくてもいいものに会うぞ」
風に混ざった血の臭いにヴァンも気付く。
急いで置いていたケースを拾って槍を仕舞うと、リュックサックと一緒に肩にかけて、キャルトの元へ駆け戻る。
少し迷った後、ヴァンは意を決して手を差し出した。
「君もすぐに逃げた方がいい」
「え?」
差し出された手とヴァンの顔を、キャルトは訳がわからないという顔で交互に見ている。
いつの間にか、周囲がかなりの緊張感に包まれていた。
強張った表情で時折風上を気にしつつ、ヴァンは焦りを含んだ声音で急かす。
「いいから早く。説明は後。ここは、じきに墓場になる」
勢いに押されて手を差し出したキャルトを助け起こすと、三人はすぐさまその場を立ち去った。
二時間後。三人がそれまでいた平原と街は、見るも無残に焼け失せていた。
「ちょっと、ついて来ないでよ」
もう随分と体力が回復したキャルトは、懲りずにそんな事を言っている。
聞かぬ存ぜぬを決め込むベイルの後ろで、ヴァンの僅かに前をキャルトが歩いているのだ。
「僕が勝ったら、僕の提示した条件を呑むって約束だったよね?」
確かそうだったよな。と記憶を手繰り寄せながら、ヴァンは問いかけた。
約束はしていないが、そういう話になっていたはずだ。
眉間に皺を寄せて、ヴァンは難しそうな顔をしている。
「今回は緊急事態のために引き分けよ。まだ勝負はついてないわ。だからあたしはまだ、あんたが弟子だって認めてないの」
したり顔で悪戯っぽく笑うと、キャルトはベイル様ー!! と叫んで前方に駆けて行った。
残されたヴァンはというと、何とも言い難いように顔を歪ませていた。
(それって、すっごく卑怯だよな)
ベイルに抱きつくキャルトを見て、ヴァンは誰にも聞こえないように心の中で一人呟き、盛大にため息を吐いた。
こうして出来上がった奇妙な三角関係は、これを期に随分と長く続くことになる。
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