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 考え続けているとどんどんまた胃が痛くなってくる。そうしたらこんな後輩とはもう飲んでくれないかもしれない。だめだ。そもそもあんな態度をとって、神島は腹を立てているだろう。もう終わりだ。 「お疲れ」 「お疲れ様です」  席はカウンターだった。お互いビールを頼む。神島は手慣れた様子で、いくつかのつまみも注文してくれた。気さくな様子は、以前とまったく変わりがない。  だけどかえって気を使われているような気がして、やっぱり居心地が悪い。トドメを刺すならさっさとしてくれと思う。 「この間は……無神経なことを言ってしまって、悪かった」  だが、急に謝られて驚いた。柳田は冷静を装いながら、ビールを口に運ぶ。 「いいですよ、別に」 「俺は本当にお前の趣味を否定する気なんてなくて……」 「わかってます、神島さんに悪意がなかったことくらい」  柳田は一気にビールを飲み干した。 「でも、俺ロリコンじゃないですから」 「そうなのか? あ、いや、わかった」  彼に悪気がないのはわかる。でも、この謝罪もどこか形だけに思えてしまう。  彼は、営業に配属が決まって本気で入社前から退職を考えた人間の気持ちなんてきっとわからないのだろう。はじめてのデートの前日に下見をしたばっかりに風邪を引いて肝心のデートをキャンセルしたり、間違えて大事な告白のメールを母親に送ったり、友人だと思っていた男に彼女を取られたり、そんなことは経験したことがないのだろう。 「……いいですよね、神島さんは」  辛かったとき、いつも心にあったのは好きなアニメやマンガだった。 「何がだよ」  フィクションはこちらを否定してこない。ときめきもハラハラも、失う辛さも全部、キャラクターから教えてもらった。 「人に言えないことなんてなんてないんでしょうね」 「なんだよ」 「あなたに俺のことはわからないです」  つい、とげとげしい言葉が口をついていた。神島にはきっと伝わらない。だけど同時に、わかってほしいとも思ってしまう。  ――甘えている。その自覚はあった。でもさっきからビールをどんどん流し込んでいるせいもあって、自分自身が止められない。 「だから、悪かったって言ってるだろ」 「ほんとに、そう思ってるんですか」 「そうじゃなきゃわざわざこうやって場を設けたりしない」
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