花のうてな 4

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見るな… これ以上見たら抑えが効かなくなる。 舛花は自身に言い聞かせた。 怒りを面に出せば、紅鳶をますます不審に思わせてしまうだけだ。 だが、視線を外そうにも体は少しも言うことを聞いてくれない。 「次は少し触れる。だが焦るな、ゆっくりだ」 舛花の心情など知る由もなく、紅鳶は淡々と進めていく。 「視線は外すな。少しでも外すと相手が不安になる。大丈夫だ、任せておけばいいと目で語りかけるんだ」 「は、はい」 言葉通り、紅鳶は升麻へと視線を注いでいる。 升麻の瞳も紅鳶へと注がれている。 まるで二人きりだけのような世界。 すぐそばに舛花もいるのだが、二人からしたら透明な存在なのだろう。 腹の底で何かがぐつぐつと煮えるような感覚がする。 その時。 紅鳶の手が升麻の着ているシャツのボタンに触れた。 その指先がゆっくりとした動きでボタンを外していく。 ひとつ、ふたつ…みっつめのボタンに手がかかった時。 カッ、と頭に血が上った。 はらわたが煮えくりかえるというより、爆発した感覚がする。 プチン、と何かが切れた音がしたその直後、無意識に体が動いていた。 紅鳶の腕を掴むと升麻の上から強引に引き剥がす。 そして、顔を洗ったらタオルで拭くというごく自然な流れの感覚で、かたく握った拳をふりあげていた。
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