花のうてな 6

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「それは…」 なんとも返していいかわからず、升麻は口籠る。 「誰かで練習する?それともお前自身が抱かれて経験してみるのか?さっきみたいに…」 舛花はそう言うと、さっき留めたばかりのシャツの第一ボタンを片手でプツリと外した。 「そんな…」 「さっきお前を押し倒していた男はゆうずい邸の元一番手だ。相手がどんなタイプであれ満足させる圧倒的なテクニックを持ってる。俺よりよっぽどセックスマシーンなんじゃない?」 舛花は自嘲気味に笑う。 だがすぐに険しい顔に戻った。 「そんな男にお前は無防備に体を差し出すつもりだったのか?」 「でも僕はゆうずい邸で…」 「お前がゆうずい邸の男娼だろうがここの連中は構いやしない。セックスの経験がないって知れてみろ。ヨダレを垂らした男たちがお前の処女を狙いにやってくるぞ」 唸るような低い声。 腰に添えられていた手が升麻の服を凄まじい力で握りしめているのがわかる。 恐らく、舛花と初めて会ったばかりだったら竦み上がっていただろう。 だが、今は違う。 どうして舛花がそんな風にムキになって怒るのか、どうして紅鳶を殴ったのか、その理由がわかった気がしたからだ。 願わくば自分と同じ気持ちでいてほしい。 もしかしたらそんな升麻の欲望が、舛花の激情を良いようにすり替えているのかもしれない。 誰にでも向ける舛花の優しさを勘違いしているだけかもしれない。 だが、心の中に秘めておくと決めた気持ちがここぞとばかりに溢れかえってくる。 「だったら…」 升麻は震える声で呟いた。 「だったら舛花が教えてよ」 舛花の瞳が僅かに見開く。 「ばかか…そんなこと…気軽に言うもんじゃない」 「気軽じゃないっ!舛花だったら…されてもいいって思ってる…」 こんなにすんなりと欲望を口にしたのは初めてだった。 しかもそれがセックスの要求なんて誰が想像しただろう。 恥ずかしくて穴があったら真っ先に飛び込みたい気分だ。 だが後悔はなかった。 昨日の口づけをした時から…いや、きっともっと前から心のどこかに抱いてきた気持ち。 それをやっと吐露できたのだから。
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