花のうてな 7

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だが、いくら待てども母親から愛情が注がれることはなかった。 16歳になった誕生日の日、舛花は家を出た。 ここにいても痛いことや嫌なことしかない。 それならいっそ一人で生きて行こう。 そう思って飛び出したのだ。 幸い容姿が優れているのと人に取り繕うのが上手かったおかげか、年上の女性に好かれ、衣食住には困らなかった。 ブランドものの服や贅沢な食事、小遣いを与えられ、セックスも覚えた。 食事も満足に与えられず、罵倒され続けたあの惨めな日々から抜け出すことに成功したのだ。 これから幸せな生活が待っている。 人から愛されて生きる、誰もが持っている権利をようやく、ようやく手に入れたのだ。 そう思っていた舛花だったが、しばらくしてそれは間違いだと気づいた。 蝶よ花よと持て囃し可愛がってくれていた女性たちが次々と舛花への興味を失くしていったのだ。 彼女たちは皆、舛花を着せ替え人形か連れて歩けるラブドールとしか見ていなかった。 いくら舛花が本気だと口説いても、彼女たちは「冗談でしょう?」とまるで子どもを扱うようにあしらう。 まるで舛花自身には微塵も興味がないと言わんばかりに。 母親のようには決してなるまい。 人を愛し、愛されて、人並みの幸せを手に入れるんだ。 そう思って家を飛び出してきたはずなのに、気がつけば母親と同じようなことをしていた。 勤め先のホストクラブでついた客を、男女問わず毎晩取っ替え引っ替え食い散らかす日々。 ただ、胸の中に空いた穴を埋めるためだけにセックスの相手を探し続けた。 そんな荒んだ性生活をしていたある日、遂にツケがまわってきた。 クラブでたまたま知り合った相手()。 男は反社会的勢力の組織を纏める男の息子だった。 彼は舛花の事を本気で好きだと言ってくれた唯一の相手だった。 体の相性は良かったし、彼の真摯な気持ちは嬉しかった。 だが、舛花は彼の気持ちを信じることができなかった。 彼もまた、今までの相手のようにすぐに飽きていく。 苦い経験が、舛花を顔とセックスのテクニックでしか見ていないのだと勝手に決めつけてしまったのだ。 舛花に相手にされなくなった彼は次第に思い詰め、自殺を繰り返すようになった。 幸いどれも未遂で済んだが、執着心の強い相手にどう対応していいか分からず、舛花は迷いながらも別れを切り出した。 彼は舛花と居ない方がいい。 そう思って切り出したのだ。 すると、彼は逆上し持っていた刃物で襲いかかってきた。 「一緒に死んで」 振り上げた刃物は咄嗟に背を向けた舛花の背中に深く突き刺さったのだ。
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