花のうてな 7

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幸い命に別状はなかったが、傷痕は一生消えないだろうと医者に言われた。 舛花を刺した彼は当然捕まった。 結末としては最悪だったが、彼からの執着から逃れることができて安堵していた。 だが、彼の身内は黙ってはいなかった。 息子を傷つけた報復といわんばかりに、舛花は反社会的勢力に命を狙われるようになってしまったのだ。 母親はもちろん、信頼できる友人と呼べるものもいなかった舛花は、誰にも頼ることができず色んな場所を転々としながらひっそりとした生活を送るようになった。 当然ながらまともな職に就けるはずがなく深夜の工事現場や、警備の仕事、キャバクラのボーイや風俗の裏方などで生計を立てる日々。 毎月ギリギリの生活だったため、煙草も酒も辞めた。 だが、あれだけ痛い思いをしたというのにセックスだけはどうしても辞められなかった。 その日ヤれそうだったら、どんなに年が離れていようとも、素性がわからなくとも抱いた。 一晩に三人相手にする事もざらだった。 だが、いくら身体を重ねても心は一向に満たされない。 いつしか舛花の他人に対する興味や感情は薄れていき、人を快楽の道具としか思えなくなっていった。 そんな時だった。 楼主に出会ったのは。 その日の相手を探すため、フラリと入った小さなクラブ。 爆音のクラブミュージックとそれに合わせて踊る人々。 薄暗い照明の中、カウンターで一人グラスを片手に座る銀髪の初老の男は一際浮いて見えた。 スーツ、ネクタイ、タイピン、時計、靴… 頭から足先まで男が身につけているもの全てが高級ブランドだ。 金を持ってる奴の方が何かと都合が良い。 舛花は、迷わず声をかけた。 「何してるの?」 いつものように軽い口調で訊ねた舛花に一瞥もくれず男は答えた。 「金になる人間を探してる」 あんな初老のジジイを抱こうとしていたなんて今考えるとゾッとするが、その時の舛花はを見つけたとしか思っていなかった。 だが男がこの淫花廓を牛耳る楼主と知り、あれよあれよという間に男娼にされてしまってから気づいた。 だと思われていたのは、舛花の方だったのだと。 しかし淫花廓に来れたことは舛花にとっては不幸中の幸いと言っても過言ではない。 まずはとにかくセックスし放題だというところ。 その上金も稼げる。 客は舛花を持て囃し、まるでスターか何かになったかのような気分になれる。 もちろん、男娼同士のいざこざは尽きないが命を狙われるという心配はない。 ここは舛花の情報を漏らす電子機器も、命を脅かす凶器も絶対に入ってこれない場所だからだ。
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