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だが、幸せを噛み締める一方で怖くなる。
好きな人とひとつになれたこの幸せな時間が、今にも足元から崩れてしまいそうな、誰かに奪われてしまいそうな気がしたからだ。
捕まえておかないと…
ちゃんと捕まえておかないと…
升麻は咄嗟に顔の横にある舛花の腕にしがみついた。
「はぁっ…あんっ…ます…はな…っ」
どこにも行かないでという願いを込めて愛しい人の名前を呼ぶ。
升麻の中を穿つ昂りが、更に質量を増した。
見下ろす眼差しは熱っぽく、時折寄せられる眉間の皺が彼の余裕のなさを感じる。
狭い場所をこじ開けられる感覚は苦しいはずなのに、舛花が自分で感じでくれている事が嬉しくて、升麻は思わず舛花を引き寄せた。
舛花の昂りが更に潜り込んでくる。
「動くぞ」
低く囁いた舛花はゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
「んっ…んっ、あっ、っく…」
初めは肉を引き摺られるような抽挿にわけもわからずただただ呻くように喘いでいただけだったか、次第に下腹部が熱くなるのを感じはじめた。
熱い…
舛花が腰を動かすたびに、下腹部が燃えるように熱くなってくる。
揺さぶられるたび首を振る陰茎から愛液が迸った。
だが、それを恥ずかしいと思う余裕さえない。
「ここだろ、いいところ」
舛花がある一点をめがけ、一際強く腰を打ちつけた。
その瞬間、全身にビリビリとした電流が走る。
「ひ…ああぁっ…!!!」
升麻は思わず仰け反った。
そこを一突きされるだけで全身を凄まじい快感が駆け抜けていく。
恐らく升麻の快楽の核のような場所なのだろう。
「だめぇっ…そこは…あっ…だめっ…ああっ!!」
升麻はついに涕泣しはじめた。
それは決して辛さや悲しみからではなく、今まで感じたことのない肉体の感覚に気持ちが追いついていかないせいだ。
それをわかっているのか、舛花は升麻の涙を舌で掬うと宥めるようにキスの雨を降らせてくる。
「ん?きもちいいだろ?ほら、俺のぎゅうぎゅう締めつけてる…感じでくれて嬉しいよ」
優しい言葉に脳が蕩かされる。
弛緩した僅かな隙を狙って更に深く舛花の昂りが更に深く潜り込んできた。
いっぱいに広がった肉洞はまるで発火しているのではないかと思うほど熱い。
そこを擦られるたびにグジュグジュと立つ卑猥な音。
もはやどこからが自分でどこからが舛花かわからなくなる。
「きもちいい…」
升麻は思わず吐露した。
その言葉に舛花が優しく微笑む。
「俺も」
どちらからともなく交わすキス。
息をする隙もないほど深く濃厚なキスを交わしながら、このまま本当にひとつになれたらどんなにいいかと思った。
やがてラストスパートのような力強い抽挿が開始される。
男根が打ちつけられるたびに襲いくる快楽の波。
下腹部から昇ってくる凄まじい感覚。
揺さぶられ喘ぎながらも升麻はなんとか言葉を紡いだ。
「好き…ぃっあああっ…舛花…っ好きっ…」
舛花が顔を綻ばせた。
いつも見せるクールな笑い方ではなく、ふにゃりと崩れた笑顔。
また一つ彼の素の表情が見れた。
そんな些細なことで胸がいっぱいになる。
「俺もだ…」
返ってくる返事にも胸がいっぱいになる。
このまま時間が止まってしまえばいいのに…
できるならこの小さな蜂巣で永遠に誰にも邪魔されずに二人きりでいたい。
叶わない願いを必死に祈りながら、愛しい人の腕で眠りについたのだった。
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