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あの後、どうやって自室に戻ったか分からない。
気がついたらソファの上で寝転んでいた。
「シャロン…」
先程の彼女の様子が頭から離れなくて、いても立っても居られなくなってきた。
冷静に先程の出来事を思い出してみると、冗談じゃ済まないようなことを言ったし、そんな態度をとっていた。
謝らなければ嫌われてしまうかもしれない。
急いで謝りに行こう。
そこまで結論が出たところでふと1つの謎を思い出した。
「婚約なんかしたっけ…?」
何せこの口は「婚約破棄」と言ったんだ。
正直、2年前までしつこく口説いて何とか妥協で付き合ってくれてるような関係だし、婚約なんて提案した時点で断られるに決まっている。
それか、俺が王子だということで断られなくて、俺にわざと嫌われるよう仕向けたのか?
彼女は賢い、俺が惚れた弱みで逆らえないのをいいことにきっと何とかしたに違いない。
理由は明確に話してもらおう。
そう思って自室の扉を開けると、執事が走ってこちらに向かってくるところだった。
廊下を走るなんて緊急の用事がある時だけだ。
嫌な汗が流れた。
「殿下!大変です!!イザード伯爵家のシャロン嬢が馬車で襲われ、亡くなったとの知らせで───」
話の途中で執事が持っていた紙をひったくり、無我夢中で走った。
ちらりと見た紙には、遺体は実家に安置されていて葬式は明日執り行うと書かれていた。
想像を絶する程の出来事が起きてしまった。
これではシャロンに真実を聞けないし、嫌われたままになってしまった。
シャロン中心だった俺の世界は、涙とともに崩れ去ってしまった。
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