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ふわふわとした感触と少し眩しい光に目を開けると、いつの間にか自分のベッドの上で寝ていた。
胃液で汚した高級絨毯と大量の汗でびしょびしょになった寝間着は別のものに変えられ、体も拭かれて不快感は全く無くなっていた。
ただ、喉と口の中だけは胃液が通ったことを主張していた。
「お目覚めになりましたか、殿下。御体の調子ははいかがでしょうか。」
俺が目を開けたことに気がついたのか、優しく声をかけてくれた。
きっと朝起こしに来たら、窓のそばで倒れている俺を見つけて世話をしてくれたんだろう。
水の張った桶とタオルにハーブティーと小さく切られた果物が用意されていて、高熱に魘されたとでも思っているようだった。
実際は病気ではなくて、予知夢だったが。
「今何時?」
「午前9時でございます。」
思っていたより寝ていたようだ。
だが、彼女の元へ行く時間にはちょうどいいだろう。
そっと差し出された体温計で熱を測り、ないことを伝えて用意されたハーブティーと果物だけを食べて、急いで身支度をした。
シャロンが生きているところを確認しないと、全く安心できない。
「殿下、ご無理はなさらないでくださいね。また夜中に倒れられては対応が遅くなってしまいます。」
「…今日のは病気じゃないから大丈夫。ありがとね、行ってきます。」
「お気を付けて行ってらっしゃいませ。」
口では言わないが、顔に心配と書いてあった。
今日は馬車でも出してもらおう。
それから、シャロンのところで大人しくしてよう。
そうすれば心配性の彼の顔もマシにはなるだろう。
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