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街の喧騒が遠のいて、馬の足音だけが大きく聞こえるようになったと思ったら、馬車が停車し、人の話し声がしてシャロンの屋敷の門が開く音がした。
着いたのかと思い、目を開けて運転手の騎士が呼びに来る前に扉を開けて降りる。
最初に渡してくれたブランケットと紙袋は畳んでシートの上に置いておいた。
「ありがとう。帰るときは電話するね。」
「で、殿下!承知しました。お身体は大丈夫でしたか?」
「うん、大丈夫。またね。」
「は!では、失礼します。」
健気に心配してくれる騎士を出迎えてくれたシャロンの家の使用人と少し見送って、屋敷に入れてもらった。
朝早くの突然の訪問なのに快く受け入れてくれて、本当に有難く思う。
まあ、俺がいつも突然やってくるから慣れているだけかもしれないが。
「おはようございます、殿下。午前中にいらっしゃるなんて珍しいですね。入学式は明日ですよ。」
「あはは、たまには。シャロンには会える?」
「ええ勿論でございます。じきにお嬢様もいらっしゃいますので、応接室までご案内致します。」
「はーい。」
昔から知っているせいか、少し笑われた気がする。
それにシャロンに応接室に来るよう言ってあるのは、毎回のことながら感心する。
彼が対応してくれる時は必ず、応接室で俺が彼にお茶を淹れてもらって一口飲んだら彼女が扉を開けて来てくれるのだ。
タイミングでも見計らっているんじゃないかと思うくらい正確だ。
まあおそらく、彼女が部屋を少し片づけて歩いてこちらへ来ると丁度いいタイミングになるだけなんだろうけど。
もしくは、使用人の彼がシャロンが丁度いいタイミングで来られるように調整しているのかもしれない。
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