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二分ほど歩いたところで、そのカフェは見えてきた。
蔦が良い具合に建物に絡まり、洋風のオシャレな雰囲気が漂っている。
中に入った二人はメニューを広げてそれぞれに食べたい品を見定めて注文をした。
樹と向かい合わせに座り、汐里はまた彼に視線を奪われている。
同棲を経て結婚し、一緒に生活をしているとイケメンでも多少飽きてきたり見慣れたりするものかと思ったりしてもいた。
だが一向にそんなことはなく、逆に色んな新しい彼を知ることが出来てときめきも日々増している。
むしろいつまででも見ていられるほど好きだと思える。
樹は、汐里からじーっと熱い視線が向けられていることに気が付いた。
目の奥がうっとりとろんとしているのが分かる。
「お~い、しおりん?眠いの?」
手を振りながら笑う樹に、汐里はハッとして答えた。
「違うよ~!もう~!樹くんってば!でもそんなところも好き」
「ちょ!こんなところでやめてくれよ」
「じゃぁどこだったらいいの?お家?」
汐里が口をむーっと尖らせて言うと樹は赤くなった顔を背けたが、視線だけ汐里に向けて言った。
「まぁ……家なら……うん。オレもそれなりに……色々……」
すると、すぐ近くからぷっと吹き出す声が聞こえてきた。
ふと樹と汐里がそちらを見ると、隣のテーブルで必死で笑いを堪えている人物がいる。
下を向いて顔を手で押さえているので誰だか分からないのだが、スーツを着た男性だということは分かった。
いくらばかばかしい話だとしても、人のことを見て笑うだなんて失礼である。
怪訝な表情でいると、その人物は顔を上げた。
「樹、お前奥さんにメロメロにやられてんなぁ」
「あーっ!昇太じゃん!なんでここにいんだよ!」
昇太と呼ばれたその人物に汐里は見覚えがあった。
結婚式の二次会で、樹の高校時代の同級生だと紹介された男性の一人だった。
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