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爽やかな見た目で真面目そうなのだが、瞳の奥にはガキ大将が住んでいるといった笑顔をしていた。
昇太は汐里の方に軽く会釈をした。
汐里も黙ったままぺこりと頭を下げた。
スーツ姿の彼は営業マンで、出先でランチをしているところだと言う。
「奥さん。樹ってばさぁ、こんなにデレデレな姿オレや友達には見せたことないですよ」
「なっ!?あ、ありえない!!」
「いっつも冷めた顔してスカしてたのに、奥さんの前ではこんなふうになるんだな。樹ちゃん、か~わいい。いいもの見せてもらっちゃった」
偶然とはいえ友達に出くわしてしまい、しかも汐里にデレている姿を見られた樹は恥ずかしさの頂点に達していた。
こう見えて照れ屋な樹にとって、まさかのシチュエーションである。
だが汐里は別の点で心を奪われていた。
(お、お、「奥さん」っ!?樹くんの奥さんだって言ってもらえた!?)
感極まって両手を胸の前でがっちりと組み、神に祈るような姿で汐里は自分の世界に入り込んでしまっていた。
奥さんと言ってもらえることにこんなに喜びを感じるなんて。
天にも昇るような気持ちでいると、そのうちに昇太は時間だと言って先に店を出ていき、樹と汐里は再び二人に戻った。
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