ヤキモチと青い月

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運ばれてきた料理を食べながら、二人はちらりと顔を上げた。 するとお互いの視線がバチッとぶつかり合い、その瞬間に頬がカーッと赤くなった。 汐里はオムライス、そして樹はチーズハンバーグを黙々と喉の奥へと流し込む。 「お、美味しいなこの店」 「う、うん。やっぱり雑誌に載ってたお店だけあるね!」 二人は良い大人であり、ましてや夫婦なのに、中学生カップルですかと言わんばかりに赤面している。 汐里は、先ほどの昇太の言葉をもう一度思い出していた。 『いっつも冷めた顔してスカしてたのに、奥さんの前ではこんなふうになるんだな』 自分といる時の樹しか、汐里は知らない。 それは、自分だけしか知らない樹の姿でもあるのだろう。 だけど、先ほどの昇太は汐里の知らない昔の樹のことも含めてたくさんのことを知っている。 時間を遡ることは出来ないが、やっぱり羨ましく思えるのだった。 店を出て手を繋いで歩きながら、汐里は考えていた。 「ねぇ、樹くん?」 「ん?どうした?」 「私、もっと樹くんのこと知りたいな……」 赤らめた頬に潤んだ瞳が自分の方を真っ直ぐ見つめている。 樹はふと考えた。 汐里のこの言い回しに一体どういう意味合いがあるのだろうか。
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