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「え、何?このまま直行したいの?」
「直行?どこへ?」
きょとんとしている汐里の耳元に近づき、樹は彼女にだけ聞こえるように囁いた。
その言葉に汐里はみるみるうちに顔を真っ赤にし、否定した。
「えーっ!!やだーっ!!違うよーっ!?あ、嫌じゃない……んだけど、まだ明るいし……!映画観るのが先……」
手と首をぶんぶん振っていたかと思うと次第に勢いは弱まってきた。
「そういうふうに聞こえたけど?」
「違うもんー!!樹くんやらしー!!」
「やらしくさせたのはしおりんだぞ。映画よりそっちがいいのかと思った。違うのか」
「……これ以上は恥ずかしくて言えないもん」
顔をそむけてはいるが、耳まで真っ赤になっているのは分かる。
あんまりいじめては可哀想だ。
樹は汐里の頭をぽんぽんした。
「ごめんな。もうすぐ上映時間だから早く行こう」
優しい声と柔らかい笑顔。
繋いだ手からも温かさが伝わってくるのが分かる。
汐里は火照った頬はそのままに、樹と一緒に映画館へ向かった。
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