ヤキモチと青い月

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「あー、面白かった。やっぱりネズミーランド系の映画は最高だわ」 顔中に笑顔を載せて、汐里は映画館の入っている建物から出てきた。 やはり、物語はハッピーエンドの方が幸せな気持ちになれる。 「うん、安心して観られるよな。けどオレは今のCGのもいいけど、昔の手描きアニメのも好きかな」 「分かる~!ちょっとかすれた線とか、レトロな色合いとかもいいのよね~」 映画の余韻に浸りながら、汐里と樹は手を繋いで歩いた。 前から行きたかったパン屋さんでのお買い物を済ませたあとは、目的もなくブラブラしている。 結婚前と違って、時間がたっぷりあるのでこういう楽しみ方も出来るのだ。 「なんか、こうやってデートしてると結婚前を思い出すねっ!」 「結婚前って言ったってほんの数ヶ月前のことじゃん。しおりん結婚しない方が良かった?」 今朝の待ち合わせの件もあり、汐里は慌てた。 「違うっ!違うよ~!?誤解だもん!樹くんと結婚して幸せなんだもん!」 「あはは、そんなに力説しなくても。うん、そう思っててくれてるんなら良かった」 泣きそうになっていた汐里だったが、樹が冗談を言っているのだと分かると安心したようだ。 夕方の時間になると、少しずつ日が暮れ始める。 並んで立ちながら海辺の夕焼けを見つめていると、大きな時間の流れの中で二人こうやって過ごせることのありがたさが胸いっぱいに広がった。 「あ~、いいなぁ」 噛みしめるように幸せそうな顔をしている汐里に樹が話しかけた。 「どしたの?」 「のんびりした時間、こんなにきれいな夕焼けを樹くんと一緒に見られて嬉しくて」 汐里の笑顔に樹は胸の奥がきゅんとするのを感じていた。 「うん、オレも」 頬が赤くなっていたが、夕焼けがごまかしてくれた。
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