アフターコロナ 2025

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 6時間目の授業は「健康管理」であった。こんな授業は以前はなかったのだ。だけど、2020年に新型コロナが世界中で感染爆発を引き起こしてから、急きょ学習指導指針にもりこまれたのよ、とマーミンは云っている。  この中学校の先生の小川麻美子はマーミンと呼ばれている。横から見た体形があのムーミンそっくりだから、というのが同級生夏美の意見だ。夏美は同級生だけど学年は一つ下。  ぼくの住んでいるのは東京都にあるО諸島のひとつの従兄弟(いとこ)島である。  従兄弟島は人口は153人。観光と島の特産物のアロエ栽培で生活を担っている。従兄弟島には学校はひとつしかない。小中学校が合同のちっぽけな学校だ。 「それでは今学習した事柄をビデオをみながら討議していきたいと思います」  動画はインターネットから取り込まれたものだし、ビデオというのも変な呼び方なのだが、昭和生まれのマーミンはいつもこう云う。 「感染予防で一番大切なのは何ですか」 「不織布マスク着用と、人込みを避けることです」  ぼくと夏美はそろって答えた。小学生みたいだった。 「先生」ぼくはマーミンに問いかけた。「ぼくは来年から高校に入学で、この島を離れます。人込みを避けるにはどうしたらいいのはわからず不安です」
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