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「ああ、和田君、そのことですが……」
マーミンが勿体付けてそう云った時、終業のチャイムがなった。
いつもマーミンの進め方は要領が悪いのだ。だからのんびり屋の『マーミン』と呼ばれるのかも。
「和田君、本日の家庭訪問のことはおうちの人ご存じですよね」
「はい。お父さんは仕事を早く切り上げると云っていました」
「そう。よかった。おうちに伺ったときに、先程のとも含めてお話ししますね」
「は、はい」
マーミンは今日はやけのもったいつけた態度を取る。
ぼくはリュックサックに教科書やノートを入れながら、夏美をちらとみた。
夏美は机のなかに置き勉して帰るようで、ペンケースとノートを2,3冊カバンに入れている。ぼくはそうはいかない。何しろ受験生だし。
勉強しなくちゃな。
校舎を出ると、外はまだ十分に明るかった。この島は日没が遅い。港に近い学校から連れ立って下校するのはいつものならわしだ。
港で作業をしている大人たちから「おう、おかえり」とか「ごくろうさん」と声がかかり、適当に挨拶をかえしながら、丘に登る道を登っていった。
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