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人と逢わない場所になるとやっと夏美は声を出した。夏美は島人にすれば珍しく内気なほうだ。ずっと幼馴染だから、ふたりになるとおしゃべりになる。
「リクヤがいなくなったら、うち一人になっちゃうよ。なんかそのこと考えると、ゆーうつ」
夏美はこんがりと小麦色の顔をしかめる。
「ああ、夏美はマーミンと合わないし、な」
「マーミンってば、6年前にここに来島したときから変わらないじゃん?
いつも都会育ちですっていうよろいを着ていてちっとも島になじまない感じ。マーミンっていうよりアルマジロだよね」
と、また違うあだ名をつけようとする。夏美はあだ名をつけるのがうまいんんだ。
「きっと、島にあまりに慣れると、戻るときにギャップがすごいからだと思うよ」
「ギャップ?」
「ぼくらはここしか知らないけど、外の世界は、全く異次元らしいよ。兄貴が云っている」
そう。都会は人工の明るさと音の洪水とそしてオオミズナギドリより多い人の群れが日常なのだ。兄は時々東京に遊びに行って、そんな写メを送ってくれてた。
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