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道はかなりの傾斜になっているし、家まで20分はかかるが、ぼくらは平気だった。大昔のサンゴの死骸が堆積した道をすいすい昇っていく。
「兄貴ってクウヤさん? 伊豆大島でもそんなにここと違うと云っているの?」
「そりゃね。従兄弟島は東京の竹柴桟橋から、唯一定期船が往来するО諸島父島からまだ、高速船で45分の、本当にはずれのはずれだからね。兄ちゃんの住んでいる伊豆大島は空港もあるし、こことは別世界みたいだよ」
「ふうん、そんなもんか」
「うん、たぶん」しかし本当はその情報は古いものだった。2つ上の兄が高校進学のために伊豆大島に行った後、かれは新型コロナに罹患して、今は後遺症でなにもかも億劫らしく連絡が間遠くなっている。
お父さんやお母さんはすごく気にしている。
「で、リクヤも来年はそこでしょ」
「うん、たぶん」とぼくは口を濁した。「今夜その話があると思うけど」
3年前に父島にあった都立高等学校が廃校になった今、島から出るのは必然だった。
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