プロローグ

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プロローグ

 指のかじかむ真冬のことでした。背の高い森の木々たちは、物言わず、しんと佇んでいます。その森に囲まれて、小さな小屋が、ぽつんと建っておりました。今、小屋に誰かがよろよろと近付いていきます。真っ黒な服を来た、おばあさんでした。 「りんごを買ってくれないかい。どうか、りんごを買ってくれないかい」  ドンドンという戸の音に、小屋の人影がびくりとしました。小屋の中には、見目麗しいお姫様がいたのです。小屋の戸は、決して開けてはいけない。開けたら、大変なことになるからと、お姫様は固く言われていました。けれども、あっけなくお姫様は戸を開けてしまったのです。  このあと起こるのは、悲劇でしょうか。それとも、喜劇でしょうか。  空は、今にも雪が降り出しそうな塩梅(あんばい)でした。
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