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「なあ、サトウ。何とか俺を、現世に返す方法はねえのかよ」
「・・・残念ながら、ありません」
「はぁ~。俺も現世でそんなに良いこともなかったけど、それなりにこれから頑張ろうって思ってたんだよ。長らくニートやってたから、これじゃダメだって、バイトの面接いって、まっとうに働こうって思ってた矢先にこれだよ」
サトウは、申し訳なさそうに俺の前で土下座した。
「本当に、本当にすみません!」
「謝られたって、俺が死んだ事実は変わらない」
「あのう、木崎さん、一つだけ、方法が無いわけでもありません」
「え?マジ?なんだよ」
「現世から、何か持ってきたものは無いですか?衣服以外で」
「寝る前だから、あるわけねえべ。・・・いや?ちょっと待て」
不精な俺は、パジャマに着替えずにそのままベッドに横たわったんだった。
ポケットをさぐると、案の定出てきた。昨日の自販機でジュースを買ったおつりだ。
「10円」
「その10円が現世とまだつながっています」
「は?」
「その10円で、現世とのトンネルを作りましょう」
「そんなこと、できるのか?」
「僕の力じゃ足りないかもしれないけど、頑張ります」
サトウに10円を渡すと、サトウはそれを掌に乗せ目を閉じると、10円は浮かびあがった。
「すげえ、マジックみてえだ」
サトウから夥しい光が放たれ、浮かび上がった10円に吸い込まれていく。
10円だったものは、徐々に巨大化して行き、人一人が通り抜けできるくらいのトンネルができた。
「今です!キザキさん!飛び込んで!早く!」
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