2855人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなハズはないだろう。鈴木様は今日まで連泊だと誰もが知っている事だ。フロント業務をまともにこなせない奴が、口出しをするな」
椅子に偉そうにふんぞり返るように座っていた支配人だが、パソコンを開き、カチャカチャとキーボードを打ち始める。
「……あっ、」
キーボードを打つ手を止め、思わず声を漏らした支配人は「ダブルブッキングだ!篠宮、一緒に来てくれ!」と慌てて部屋を出る。立ち尽くしていた私も急ぎ足で追いかける。
私が疑問に思っていた件は、やはりダブルブッキングだった。
鈴木様のお部屋に野々原様の予約が重なり、野々原様を違うお部屋に誘導したので、別なお客様のお部屋が足りなくなる。
本日空いているお部屋はエグゼクティブフロアのスイートルームのみ。どうするの、支配人?
「先程の件、篠宮のせいではなかったようだ。ダブルブッキングになっていたぞ。気付かなかったのか?」
フロント裏の事務所にマネージャーを呼びつけて注意を促す。
「申し訳ありませんでした。調べたところ、予約した者の手違いで鈴木様の連泊が昨日までになっておりました。そこに別なお客様を入れてしまったようです」
「ハウスキーパーに指示した時に気付かないから、そういう事になる。部下に任せっきりで確認を怠るから、こういうミスが起きるんだ」
最初のコメントを投稿しよう!