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「よし、問題はないな。そろそろ、鈴木様がお戻りの時間だからフロントに戻ろうか…」
「鈴木様にまた謝るんですか?」
「そうだな、頭を下げるのには変わらない」
……?
良く分からないが、再度、鈴木様に頭を下げるらしい支配人。支配人が再度謝る事になるとは、鈴木様は相当御立腹なんだろうな。
私を傍に置いているのは、鈴木様に謝らせる為だったんだと解釈する。
「あ、あのっ、支配人っ!」
「何だ?」
34階に属するスイートルームを出て、エレベーターを待っている間に支配人に話をかけた。
「私が先に謝ります。鈴木様と野々原様に失礼な事をしたのは事実ですからっ」
「その件は了承済だから、蒸し返すな。謝りたければ明日のチェックアウトの時にしろ」
冷たく言い放ち、私は身体がゾクッとした悪寒を感じた。
冷酷、鬼軍曹……、異名がつけられるのも納得出来る。
「今日は黙って着いて来ればいい」
エレベーターが到着し、二人で乗り込むとそんな言葉をかけられた。
不敵な笑みを浮かべた支配人に心が反応して、胸がドキリとした。
さっきまでは、あんなに冷たかったのに、今の微笑みは反則でしょう──
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