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「なるほど……。でも、私がいたホテルではよっぽどの繁忙期以外は逃がし部屋ありましたよ?こちらはないんですね?」
「いや、いつもならある。
今回の件はダブルブッキングした上に、キャンセルを見込んでオーバーブックして満室にしてしまい、逃がし部屋も作らなかった。しかも、それをチェックインまで隠し通していたとは、とんだ馬鹿がやる事だな」
「そ、そうですか……」
ダブルブッキングとは同じ部屋に2つのお客様が予約してしまう事、オーバーブックはキャンセルを見越して余分に予約を入れてしまう事。
老舗高級ホテルが本店の系列ホテルがオープンしたとメディア等でも取り上げられ、予想外に予約が集中。
予約した者も慣れない為に、試行錯誤してミスを侵してしまう事になった。
支配人は淡々と話し、掃除用具のある場所へと向かう。
掃除用具、シーツ、タオル、アメニティなどを台車に乗せて、業務用エレベーターから客室エレベーターへと乗り換えた。
「次は鈴木様が宿泊した部屋を掃除する。ここは到着時間が遅いお客様を入れる事にした。お前は、水周りを頼む」
ピピッ、ガチャッ。
鈴木様が宿泊していた部屋にカードキーを差し込んでロック解除をしてから入り、早速、支配人はシーツを剥がし、ベッドメイクに取り掛かる。
私もお風呂、洗面所、トイレ等を掃除し、仕上げに水滴が落ちていないように拭きあげた。
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