磯巾着、出世魚を食らう

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「あんたは俺のものだ」 気がつけば深夜だった。 ぱちりと眼を開けると、俺のすぐ目の前にはサンマがすやすやねんねしていて、ああ飲んでいる間に酔いつぶれていたのだ、と思った。 固いフローリングに仲良く転がっている。 目が覚めたのは、 低い声が囁いたからだった。 俺の背中ごしに、なにかが蠢いていた。 俺のものだ、と言った声は、竹沢さんだった。 女でも連れ込んだのか。そうだとすれば寝室でやってくれ、と女日照りの俺がやきもきしていると、また違う低いひそひそ声が聞こえる。 「駄目駄目、今日は駄目だ、お客がいるだろう」 「構うもんか、起きやしねえよ。」 「今日は疲れちまった、今度にしようや」 おじさん、と竹沢さんが囁いた。俺はまさか、と思った。 伊香と竹沢さんがナニをしようとしている。 やべえ、と思った瞬間、サンマの瞳と視線があった。 こいつも固まっている。俺からは見えないものがこいつには見えている。薄暗い、月の光だけが差したリビングで何か怪しげな空気が流れていく。 ごそ、とまんまるのサンマの瞳に写ったなにかが蠢いている。 「おじさん、もしやあいつらに手を出したんじゃねえだろうな、そうだとしたら容赦しねえぞ」 「冗談なしだぜ、俺にだって選ぶ権利はある、あんな痩せっぽっち共なんかにチンポが勃つ訳ゃねえだろう」 「なあ…、俺のを触っておくれよ。固いだろう、どうにも我慢できねえんだ、破裂しそうだよ」 「よせよせ、煽ったって無駄だぜ、今日はしねえったら」 「扱いてくれるだけだっていい、掘らせてくれとは言わねえよ。慰めてくれよ、なあ…手でいいから…な?」 すん、すん、と 俺達が聞いた事がない竹沢さんの甘えた声が聞こえる。 低い、甘え声は荒い息と一緒に出ていた。 竹沢さんが欲情している。 それを伊香は上手くなだめていたが、仕方ねえな、と言う声と共にジッパーを下ろす音がした。 「いい年こいて駄々をこねるんじゃねえよ、何も今日でなくっても」 「堪らなくムラムラきちまったんだよ、あんたが他の男と寝てやがるから」 「雑魚寝も駄目なのかよ、ああこんなに腫れちまって。ボコボコになっちまってる、だから真珠なんか入れるなってあれほど言ったじゃねえか、みっともねえ」 「頼むよ、早く」 しこしこ、と擦る音と、切実そうに唸る竹沢さんの声、冗談じゃねえ、竹沢さんがその気の人だったなんて知らなかった、知ってたら世話になろうだなんて恐ろしい事、誰がするものか。 ああ、そうか。 寝室のコンドーム。 あれは乱交じゃなくって。 (早く寝ちまおう) 考えれば考える程空恐ろしい想像に俺は目を閉じた。 だけど、声が 「ほら早くイっちまえ、出しちまえよ、我慢するんじゃねえや」 「おじさんやっぱり俺」 「駄目だって言ってるだろう」 「うるせえっ」 ガタンッと何かが倒れる。俺のうっすら開いた横目に闇夜に浮かぶ棒が、見えた。 棒、というか ボコボコした肉の棒だ。
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