磯巾着、出世魚を食らう

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尋常じゃねえでかさの、異物で装飾されたそいつは普段温厚を装う竹沢さんの本性のようで、ヌラヌラと涎を垂らしながら闇に消える。 伊香を押し倒した竹沢さんの腕が俺の背中に触れた。 一層クリアな音声が、俺の耳に聞こえてくる。 「あんたは、俺のものだ、それ以外見向きもするんじゃねえ。他の奴らがどこでどうしてようが、構うんじゃねえ、俺を見ていりゃあいいんだよ。ああ…たまんねえ、たまんねえんだよ。あんた、俺の初恋だ。一緒に風呂に入った時、口でしゃぶってくれただろう、俺の皮を剥いてくれたろう。畜生、そんな事をするもんだから、俺はあんたじゃねえと満足いかなくなっちまったじゃねえか、どうしてくれるんだ、」 「カツ坊」 「俺は知ってたんだぜ、パチンコ狂いは婆もあんたも一緒だった、便所に男を連れ込んで金をせびってたのはどこのどいつか、俺は見てたんだぜ、丁度パチンコ屋の裏に便所の窓がついていた、あんたは便所の床に足をついて…あんたがいなけりゃあ俺はまともな女を捕まえてガキの一人や二人できていた筈なんだ、ああそうだよ、こんな体にしやがった責任はきっちりとってもらうと俺は何遍も言ったが言っても言っても言いたりねえ」 憎いぜ、と竹沢さんは苦々しく言い放ち、それに対しての返事はなかったが、ただ嗚咽のような笑いが聞こえた。 俺は自分の事でもないのに胸が爆発しそうになって、やけに自分の心臓の音が鼓膜に響く。 背中に触れた竹沢さんの腕が、震えているのはなぜだろう。 四十を超えた俺だが、ノーマルの恋愛しかしていない人間にとって、こいつは、こいつはちょっとハードルが高すぎる。尊敬していた人間の恋愛をこんな風に知る事になるってのは、非常に鬱な気分だぜ。 「くそったれが」 竹沢さんが呻いていきなり俺を押しのけた。その衝動で俺はうつ伏せになる、うっすら目を開けて様子を探ると、伊香の顔が見えた。 奴は半目で、何が面白いのか唇を少し吊り上げている、焦ったような竹沢さんを嘲笑っているような。 「落ち着けよ、カツ坊。俺は逃げやしねえさ」 「逃げられるもんか、散々探した獲物を逃がしゃあしねえ、あんた以外に俺の熱は冷ませねえんだ、忌々しい話だぜ、ほらくわえてしゃぶれ」 俺の目の前に、あの凶悪な逸物がぶら下がる。 伊香は、太い眉を少ししかめた後、口を、開けた。ちろちろと舌が出入りしている。 あ、あ、あれはまるで磯巾着の口だ、と思った。 獲物がピタピタと唇の周りを這う。ボコボコとして張り詰めたそいつが粘液を撒き散らしながら、狙いを定めて止まった。そして口の中にゆっくり、侵入していく。 ず、ずずず、ぬらぬら、その度に伊香の喉元が動いて、大きな怪物が全て埋まった頃、喉仏のあたりが不自然に膨れていた。 俺の目の前には伊香の顔に跨った竹沢さんのインモーが踊っている。 うう、グロテスクな物がゆっくりと動き出した。慣れているのか伊香は少し頭を上げ、じゅる、と音を立てて頬張る。逸物に手を添えながら、奴はすすりあげる、バキュームテクニックだ、躊躇なく奴はくわえ、遠慮なく竹沢さんは突き込んだ。 「ん、ん、んぅ」 「まだだ、まだ足りねえぞ、もっと喉を開けて迎えてみろよ、そんなんじゃあいつまで経ってもイけやしねえ」 ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ 規則正しいリズムで竹沢さんが腰を振る。 伊香の頭を鷲掴みにして、奥へ、奥へ。 しばらくそいつを繰り返した後、いきなり竹沢さんは逸物を引き剥がし、反りたったそいつを伊香の顔に向けて精を放った。 ぴゅるっ、と円を描く形で出た液体が奴の顔に降り注ぐ、熱いそいつは俺の手にもちょろっと飛び散った、うう冗談じゃねえ、もしも竹沢さんがサンマだったら今すぐに飛び上がってぶん殴ってやる所だ。 だが俺は耐えた、二人の荒々しい息が聞こえる。ちらっとサンマを見れば、奴は目をぎゅっとつぶって念仏をクチパクでとなえているようだった。 現実逃避か。 願わくば俺もそうしておきてえが、こう近くっちゃあ、無視も出来やしない 運がない、本当に俺達はついてねえ、なのに俺達が起きている事に気がつかない二人はまだまだヤル気だった、げっそりだ。 ああ、と伊香がため息をついた。顔に飛んだ液体を拭いながら、笑った。
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