黒いほころび

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清水には大それた欲はなかった。会社勤めと同じぐらいの収入さえあればそれで良いと考えていた。 嫌な上司や気の合わない同僚なんかに気を遣わず、自分さえ頑張れば今までと同じ暮しが出来るならそれでいいと。 どうせ満席になっても僅か10席の立ち食いスタイル。大儲けが出来るはずもない。 つまり、大ざっぱに見積り、家賃、光熱費、人件費、材料の仕入れ等の全支出から引いた残り、清水個人の月収が30万もあれば万々歳。 だから純利益もそんなにがめつい額は想定していなく、1枚3000円のステーキの利益も100円少なく設定し、客に喜んでもらえるようにしている。 だから客にすれば安い価格で上手い本物の神戸牛が食べれるのだ。 ニンニクも1番人気の青森産をわざわざ使用し、その代わり、ステーキには付き物のにんじん、ポテトは思い切って省いた。
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