3.睨む男

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3.睨む男

◆◇◆ 「彼女が、リディア・オールドマンか」  その声を発した男は、オールドマン家の邸宅、その二階にいた。  彼の視線の先には、意気揚々と歩くリディアと彼女の目付役である執事がいる。  いきなり立ち止まった彼を不審に思ったのだろう、クロークを案内してくれていた使用人が「どうかしましたか、ダグラス様」と声をかけてきた。  そんな彼にダグラスは「いや……」と言葉を濁した後、再び歩を進めはじめる。しかし、歩みを再開してもなお、彼の視線はリディアに固定したまま、微動だにしなかった。 「とうとう見つけたぞ。〝アネモネ〟」  意図して出したのではないだろうその声は、限りなく低い。  まるで仇敵に向けるかのような声を背中で聞き、使用人はブルリと身を震わせた。 ◆◇◆
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